ベテルギウスの爆発は10万年以上先になりそう

このエントリーをはてなブックマークに追加
ベテルギウスの明るさの変化を理論分析した結果、超新星爆発を起こすまでまだ10万年程度の時間が残されていることがわかった。

【2021年2月12日 カブリIPMU

オリオン座の肩の位置に輝く1等星ベテルギウスは、恒星進化の最終段階にある赤色超巨星で、「いつ超新星爆発を起こしてもおかしくない」と言われることが多い。2020年初めに前例のないほど大幅に減光し一時的に2等星になった際には、爆発のときが迫っているのではないかとの憶測もあった。だが最新の研究によれば、どうやら私たちが超新星を目撃できる可能性は低そうだ。

ベテルギウス表面の画像と光度変化
(上段)ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTで撮像された2019年1月(左)と2019年12月(右)のベテルギウス。(下段)最近のベテルギウスの光度変化(提供:(上段)ESO/M. Montargs et al.、(下段)L. Molnar, AAVSO, UCSD/SMEI, NASA/STEREO/HI)

オーストラリア国立大学のMeridith Joyceさんたちの研究チームは、恒星進化や脈動の流体力学、星震に関する理論計算を駆使して、これまでのベテルギウスの明るさの変化を分析した。

その結果、現在のベテルギウスは、星の中心部でヘリウムの核融合が起こっている段階にあると結論づけられた。ベテルギウスのような質量が大きな恒星は、この後の段階として、ヘリウムから生成された炭素などの核融合が始まる段階が控えている。したがって、ベテルギウスが超新星を起こすまではまだ10万年以上の時間が残っているという。

また、「κ(カッパ)メカニズム」と呼ばれる星自身が膨張と収縮を繰り返す脈動により、185(±13.5)日と約400日の2つの周期で明るくなったり暗くなったりする変光を継続的に繰り返していることが明らかになった。一方で、2020年初めの大幅な減光は、ベテルギウスの脈動に加えて、星から放出された大量の塵による減光が関わっていることが示唆された。

過去15年間のベテルギウスの明るさの変化
過去15年間のベテルギウスの明るさ(実視等級)の変化を示した図。画像クリックで表示拡大(提供:L. Molnar, AAVSO, UCSD/SMEI, NASA/STEREO/HI)

今回の研究ではさらに、ベテルギウスの現在の質量は太陽の16.5倍から19倍ほどで、最新の推定値よりわずかに小さいことがわかった。また、半径は太陽の750倍で、従来の研究から推定されていた値の3分の2ほどであることもわかった。ベテルギウスが太陽の位置にあれば、表面は火星と木星の間の小惑星帯まで達することになる。これらの計算値に基づくと、ベテルギウスまでの距離は530光年で、これまで考えられていたよりも約25%近いことが明らかになった。近いとはいえ、超新星爆発が起こっても地球に大きな影響を与えることはないと見込まれている。

ベテルギウスの爆発を私たちが観察できる可能性は低そうだというのは残念ではあるが、依然としてベテルギウスは、超新星に至るまでに恒星がどのような経過をたどるかを研究する貴重な天体として、天文学者たちの注目を集め続けそうだ。