アルマ望遠鏡、最も遠い回転円盤銀河を発⾒
【2024年10月16日 アルマ望遠鏡/ヨーロッパ南天天文台】
銀河は小さなものが互いに激しい衝突合体を繰り返しながら、長い年月をかけて、よりなだらかな形の大きいものへ成長すると考えられている。そのため、最も初期の宇宙に存在する銀河は、まだ小さく整っていない姿をしていると予想される。現在の理論によると、天の川銀河と同じくらいの年齢の渦巻く腕を持つ銀河の姿は、数十億年もの進化の結果ということが示されている。
しかし、こうした従来の考え方や理論から示される銀河進化のタイムスケールに疑問を投げかける銀河が見つかった。
オランダ・ライデン大学のLucie Rowlandさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使った観測により、ろくぶんぎ座の方向131億光年彼方(赤方偏移z=7.31)の初期宇宙に、天の川銀河に非常によく似た大きな回転円盤銀河「REBELS-25」を発見した。宇宙誕生から7億年しか経っていない時代に回転円盤を持つ銀河が見つかったことは大きな驚きだ。
REBELS-25はRowlandさんたちによる別の観測で初検出され、回転円盤銀河である可能性が示唆されていた天体だ。当初は解像度が十分ではなかったために確証が得られなかったが、銀河の構造や回転運動を調べるために追観測を行ったところ、回転するガスの運動がはっきりと示され、回転円盤銀河であることが確かめられた。アルマ望遠鏡が取得したデータからは、天の川銀河に似た棒構造や渦巻き状の腕のような特徴も示唆されている。
「宇宙誕生から間もないころに、回転する円盤をもつ銀河が存在したとは驚きです。これは、これまでの銀河の形成に関する理解を覆す可能性のあるエキサイティングな発見です。初期宇宙の銀河の探査観測を重ねることで、REBELS-25と似た回転円盤銀河がさらに見つかる可能性は十分にあります。銀河の進化スピードは、私たちがこれまで考えていたよりもずっと速かったのかもしれません」(広島大学 稲見華恵さん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:最も遠い回転円盤銀河の発見
- ESO:Space oddity: Most distant rotating disc galaxy found
- MNRAS:REBELS-25: Discovery of a dynamically cold disc galaxy at z = 7.31 論文
〈関連リンク〉
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