木星の衛星を探査、「エウロパ・クリッパー」打ち上げ成功

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10月15日、NASAの探査機「エウロパ・クリッパー」が打ち上げられた。木星の衛星エウロパの表面下にある海などを調べ、生命に適した環境の有無を探る。

【2024年10月15日 NASA

日本時間(以下同)10月15日午前1時6分、NASAの探査機「エウロパ・クリッパー」を搭載したスペースX社のファルコンヘビーロケットが米・フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。

ロケットは順調に飛行し、2時9分ごろにロケットから探査機が分離された。その後、地上との通信が確立し、探査機の正常な動作が確認され、打ち上げは成功した。

エウロパ・クリッパーの打ち上げ
エウロパ・クリッパーの打ち上げ(提供:NASA/JPL

エウロパ・クリッパーは来年2月に火星スイングバイ、2026年1月に地球スイングバイをそれぞれ実施し、約5年半に及ぶ29億kmもの旅の末に2030年4月に木星系に到着する。その後、2031年から4年間かけてエウロパへの接近飛行を49回実施し、最接近時は地表からわずか25km上空を通過して、分光計やレーダー、磁力計など9つの観測機器を使って衛星全体を調べる。

「地球外の海洋世界への初の旅を開始したエウロパ・クリッパーのチームに祝意を表します。エウロパ・クリッパーによる未知の世界の探査は、太陽系内だけでなく、太陽系外の数十億の衛星や惑星における生命存在の可能性を理解するために役立つことでしょう」(NASA長官 Bill Nelsonさん)。

木星系は太陽から地球の5倍以上離れているため、観測機器に必要な電力を得るためには巨大な太陽電池パネルが必要だ。エウロパ・クリッパーの太陽電池パネルを展開すると、幅は30mを超える。また、木星の磁場は地球の2万倍、磁気圏は地球の1200倍も大きく、強い放射線帯が形成されているため、探査機には厚さ9mmほどの保護板が取り付けられている。

エウロパ・クリッパーのイメージイラスト
エウロパ・クリッパーのイメージイラスト。展開後の太陽電池パネルの幅は30mを超える(提供:NASA/JPL-Caltech

エウロパ・クリッパーが目指す木星の第2衛星エウロパは、地球の月と同じくらいの大きさの天体で、表面は厚い氷に覆われている。その氷の殻の下には地球上の海水のおよそ2倍の塩水をたたえた内部海が存在すると考えられていて、生命の材料となる有機物や、生命に必須の化学エネルギー源の存在も示唆されている。さらに、水や有機物、化学エネルギーを持つ環境が過去40億年間安定して続いてきたとみられている。こうしたことからエウロパは、太陽系内では地球以外で生命に適した環境の存在が最も期待できる天体の一つとなっている。

エウロパの内部構造
エウロパの内部構造の想像図。(左)表面を覆っている厚い氷の殻の下に塩水をたたえた海(青)が広がっており、その下に岩石質のマントル(茶)と金属核(灰)があると考えられている。(右)表面を覆う厚い氷の殻の下に、深さ60~150kmの塩水をたたえた海が存在するという強い証拠が、これまでの観測で得られている。表面から柱状に水蒸気が噴出している証拠もあり、水蒸気を調べれば生命に必要な物質の存在可能性が検証できる(提供:NASA/JPL-Caltech(右)(左)

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