X線と紫外線の同時観測で特定、恒星フレアの鉄Kα輝線の起源は光電離

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天文衛星「ひさき」の紫外線観測などにより、恒星フレアで検出される鉄Kα輝線の放射機構が光電離であることが特定された。

【2026年5月7日 京都大学

太陽の表面で突発的に発生する「フレア」は、磁場のエネルギーが短時間で解放されて熱やX線などが放射される爆発現象だ。地球に向いた面でフレアが発生すると、人工衛星や有人宇宙活動、さらには地上の施設などにも影響が及ぶことがある。

活動が活発な恒星では、最大級の太陽フレアの20倍以上も規模が大きい「スーパーフレア」も観測されている。太陽フレアが地球に及ぼす影響と同様に、恒星フレアによって系外惑星の環境も変化するため、恒星そのものと系外惑星の両方を理解するうえでフレアの観測や研究は重要だ。

スーパーフレアの想像図
スーパーフレアの想像図(提供:MPS/Alexey Chizhik

太陽・恒星フレアのX線観測ではしばしば鉄Kα輝線が検出されるが、その形成メカニズムについて2つの可能性が考えられてきた。一つはフレアループから放たれたX線が星の表面に届き、鉄原子を電離する「光電離」と呼ばれる現象、もう一つは、フレアの初期に磁力線がつなぎ替わる「磁気リコネクション」現象によって高エネルギー電子が星の表面に衝突し、鉄原子を電離する「衝突電離」である。この問題については、太陽観測衛星 「ひのとり」による太陽X線の分光観測が活発だった1980年代に盛んに議論されたが決着に至らず、その後30年以上にわたり同様の観測は行われてこなかった。

京都大学の井上峻さんたちの研究チームは、国際宇宙ステーションに搭載されたNASAのX線望遠鏡「NICER」とJAXAの惑星分光観測衛星「ひさき」を用いて、スーパーフレアを頻繁に起こす連星系「おひつじ座UX」をX線と紫外線で同時に観測した。

井上さんたちは最大級の太陽フレアの1万倍以上という規模のスーパーフレアをとらえ、その観測データから、紫外線のピークがX線のピークより約1.4時間早く現れていたことがわかった。太陽フレアの標準的なモデルと比較すると、観測された紫外線は高エネルギー電子を、連続X線は高温プラズマからの放射を代表していると考えられる。

また、鉄Kα輝線の明るさの時間変化のピークは、紫外線ではなく連続X線のピーク時刻と一致していた。これは、鉄Kα輝線がフレアで生じた高温プラズマからのX線光子による星表面の鉄原子の電離、つまり「光電離」によって生じていることを強く支持する結果である。時間変化の観測から鉄Kα輝線の発生機構が明確に示されたのは、恒星フレアにおいては今回が初めてだ。

フレア中の紫外線・連続X 線・鉄Kα輝線の時間変動
フレア中の紫外線・連続X線・鉄Kα輝線の明るさの時間変動(提供:京都大学リリース、以下同)

今回の結果をもとにすると、鉄Kα輝線を手がかりとして、恒星フレアが星の表面のどこで起こるかを推定できるようになる。今後、鉄Kα輝線の強さをさらに正確に測定できるX線天文衛星「XRISM」の観測によって、フレアの発生位置や構造がより詳しくわかっていくだろう。

今回の研究の概要図
今回の研究の概要図。画像クリックで表示拡大

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