超新星は宇宙の巨大粒子加速器「ペバトロン」になりえるか

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2023年に出現した超新星と、同時期の高エネルギーニュートリノ事象とを組み合わせた研究から、超新星が巨大粒子加速器のように働いて高エネルギー宇宙線を生み出す「ペバトロン」である可能性が示された。

【2026年7月28日 理化学研究所

宇宙を飛び交う宇宙線は高エネルギーの粒子の流れだが、粒子がどのようにして高エネルギーを獲得したのかについて、加速源の候補となる天体や現象が複数考えられている。その一つが超新星爆発だ。とくに、爆発で生じた衝撃波が、爆発前に星の周囲へ放出されていた濃いガスと衝突すると、粒子が非常に高いエネルギーまで加速される可能性があると考えられている。

2023年10月にしし座の領域で発見された超新星「SN 2023uqf」は、スペクトルに水素がなく狭いヘリウム輝線を持ち、Ibn型超新星という珍しいタイプに分類される。SN 2023uqfは明るくなった後に短期間で急速に暗くなるという変化を見せ、周囲の濃いガスと爆発後の衝撃波の相互作用が強かった(すなわち、宇宙線の加速源候補である)可能性が示唆されてきた。

一方、SN 2023uqf発見の少し前に、南極点に設置されているニュートリノ検出器「IceCube」で高エネルギーニュートリノ事象「IC-231004A」が検出された。物質と作用しないニュートリノは発生源からほぼ直進して地球に届くため、宇宙線の発生源を探る有力な手がかりとなるが、それでも正確な方向はわからない。ニュートリノの飛来方向の不確定領域を追跡観測した結果、SN 2023uqfが発見され、両イベントには関連があるのではないかと考えられた。

本研究のイメージイラスト
本研究のイメージイラスト。超新星(SN 2023uqf)の方向から南極のIceCubeへ高エネルギーニュートリノが到来している様子(提供:理化学研究所)

理化学研究所 数理創造研究センターの澤田涼さんたちの研究チームは、SN 2023uqfの光の変化から爆発環境を推定し、その環境が高エネルギーニュートリノを生み出し得るかを検証した。

まず、1次元放射流体シミュレーションによってSN 2023uqfの可視光線観測を再現したところ、観測された急速に変化する光度曲線は、爆発した星の周囲に高密度のヘリウムを多く含むガスが存在し、衝撃波がそれと衝突していた場合に説明できることがわかった。

このモデルから衝撃波の半径や速度、衝撃波が通過するガスの密度を時間ごとに計算し、それらの情報を用いて粒子加速とニュートリノ生成を計算した結果、SN 2023uqfでは爆発後の短い期間に、ペタ電子ボルト(PeV:1000兆電子ボルト)級の粒子加速と効率的なニュートリノ生成が同時に起こり得ることが判明した。

さらに、理論モデルが予測したニュートリノ量にIceCubeの検出効率を組み込み、実際に何件程度検出されるかを計算したところ、SN 2023uqfの距離(約24億光年)では多くても1万回に1回程度と非常にまれであることが明らかになった。つまり、IC-231004Aの発生源は、必ずしもSN 2023uqfとは断定できない。

しかし、仮にSN 2023uqfから1件のニュートリノが検出されたと仮定すると、その検出されやすい時期がIC-231004Aの観測時刻と重なっていた。また、IC-231004Aのエネルギーも、理論モデルが予測するニュートリノのエネルギー範囲と整合的だった。

これらの結果から、SN 2023uqfの観測データをもとにして推定される爆発環境は、IC-231004Aの時刻とエネルギーを説明しうることが示された。

SN 2023uqfの光度変化、IC-231004Aの検出時刻との比較
SN 2023uqfの光度変化、およびIC-231004Aの検出時刻との比較。(星印)SN 2023uqfの観測データ(色の違いは観測波長の違いに対応)、(星印と同色の曲線)今回の研究のモデル。(青い曲線)計算による、ニュートリノ放射の時間変化。
横軸は爆発からの日数を表し、爆発から約10日後に超新星として発見されたことを示す。また、灰色の点線はIC-231004Aの検出時刻を示す。この時刻は、モデルによるニュートリノ光度(右軸)がピークを過ぎて間もない時期にあたり、検出効率を考慮した別の計算(本文で述べた「1万回に1回程度」の評価)でも、IceCubeによる検出が起こりやすい時間帯に該当することが示されている(提供:Sawada et al.

宇宙線をペタ電子ボルトを超えるような超高エネルギーまで加速している天体の候補は「ペバトロン」と呼ばれる。1ペタ電子ボルトは、欧州原子核研究機構が運用する世界最大の加速器LHCで加速される陽子1個のエネルギーの約140倍にも達する強度で、ペバトロンは文字通りけた違いの巨大粒子加速器のようなものだ。今回の研究成果は観測データから超新星の環境を推定し、超新星が高エネルギーニュートリノをも生み出すようなペバトロンとして働くことができるかを調べる、「観測と理論をつなぐ手法」を示したものといえる。

今後、同様の超新星を調べることで、どのような爆発環境が高エネルギーニュートリノを生み出しやすいのかを統計的に明らかにできるかもしれない。また、可視光線だけでなく他波長の電磁波やニュートリノによる観測を組み合わせて、超新星の衝撃波がいつ粒子加速を始めるか、どの程度のエネルギーまで粒子を加速できるのかを、より厳密に調べることもできるだろう。

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