人類未踏の地を目指す、火星衛星探査機「MMX」10月20日打ち上げ
【2026年8月24日 JAXA宇宙科学研究所】
JAXAは、火星衛星探査機「MMX(Martian Moons eXploration)」を10月20日(火)にH3ロケット10号機で打ち上げることを発表した。
MMXはJAXAを中心にNASAやヨーロッパの宇宙機関が参加する火星圏サンプルリターンミッションで、人類未踏の火星の衛星フォボスからサンプルを採取し地球に持ち帰るという、世界初の試みに挑む。約1年かけて火星圏へ到達し、その後約3年間火星圏に滞在する。地球へのサンプルリターンは2031年の予定だ。

MMX(中央)とフォボス(左上)と火星(右)の想像図(提供:JAXA)
火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星がある。そのうちフォボスは直径22km程度の小衛星で、火星の上空約6000kmの軌道を公転している(ダイモスはさらに小さく、より火星から離れている)。衛星の起源はまだ明らかになっていないが、巨大衝突によって形成された破片が集積した「巨大天体衝突説」と、火星に近接遭遇した天体が火星の重力によってとらえられたとする「小惑星捕獲説」の2つが提唱されている(参照:「小天体の捕獲による火星衛星の形成メカニズムを解明」。「火星の衛星は巨大天体衝突で形成可能、シミュレーションで解明」)。

巨大衝突によって形成された破片から衛星が集積する巨大天体衝突説(左)と火星と近接遭遇した天体が火星の重力によってとらえられたとする捕獲説(右)の概念図。
巨大衝突説による形成の場合、フォボスの試料は衝突した天体である小惑星や彗星由来の物質と火星の地殻・マントル由来の物質の混合物で、その分析から初期の火星環境に関する知見が得られると期待される。
小惑星の捕獲による形成の場合、フォボス試料にはリュウグウのように水を含む鉱物や有機物など生命材料分子が豊富に含まれている可能性があり、太陽系外縁部で形成された天体に特徴的な性質を持つと考えられる(提供:JAXA宇宙科学研究所)
起源の謎に迫るため、MMXはフォボスの地形や内部構造、組成などを観測するほか、表面からサンプルを採取して地球に持ち帰る。探査結果やサンプルの分析から、火星衛星の起源や火星圏の進化の過程が解明されると期待される。その知見は、地球型惑星における生命の誕生と生命居住可能な環境の起源を探る手がかりともなる。
2つのうちフォボスを目指す理由は、ダイモスより大きく質量があり安定して着陸しやすいこと、サンプル採取地点の決定に役立つ情報量が圧倒的に多いことだ。ダイモスに比べフォボスは表面組成に多様性があることもわかっている。また、火星に近いフォボスには火星から舞い上がった物質もダイモスより多く存在すると考えられ、火星の進化に関わるより良い情報源となり得ることも挙げられる。
さらに、フォボスとダイモスは将来の有人火星探査における「中継基地(前線基地)」の候補地としても注目されていて、MMXでは探査技術面で将来の有人探査活動の礎となる技術の獲得も目指している。「火星圏への往還技術と惑星衛星圏への到達技術」、「火星衛星表面への到達・滞在技術や天体表面上での高度なサンプリング技術」、「深宇宙探査地上局との組み合わせに最適化された通信技術」の3つだ。

MMXの軌道計画図。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)
MMXはフォボス到着後に往路モジュールを切り離し、探査モジュールと復路モジュールがフォボスを周回しながら、着陸地点の選定や観測を実施する。次いで、ヨーロッパで開発されたローバー「IDEFIX(イデフィックス)」がフォボス表面へ先行着陸し、着陸地点を事前に調べる。

(左)MMXを構成する3つのモジュールの分解図、(右)2024年3月にフランス国立宇宙研究センター、ドイツ航空宇宙センターからJAXAへ引き渡されたローバー「IDEFIX」(提供:JAXA(左)、(右))
その後、探査モジュール(と復路モジュール)が最大2回フォボス表面に着陸し、ロボットアームを使って試料を10g以上採取する(探査機「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの試料は約5.4g)。2030年に探査モジュールが切り離されて、復路モジュールが火星圏を離脱し地球へ向かい、2031年に地球に戻ってくる、というスケジュールだ。
MMXは、JAXAがこれまでに「はやぶさ2」や小型月着陸実証機「SLIM」などで培ってきた技術の集大成だ。打ち上げから帰還まで約5年間の長旅からもたらされる成果は、火星圏進化の歴史の理解と将来の宇宙探査発展に大きく貢献すると期待される。
火星衛星探査機(MMX)ミッション紹介動画「MMX:フォボスへの旅路」(2025年5月公開)(提供:JAXA相模原チャンネル)
〈参照〉
〈関連リンク〉
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