アルマがとらえた、巨大氷惑星の形成現場
【2016年9月15日 アルマ望遠鏡】
近年、多様な太陽系外惑星が数多く発見されているが、それらの惑星が形成される過程を調べるには、若い恒星を取り巻く塵やガスの円盤を観測することが重要となる。こうした「原始惑星系円盤」の中で惑星が生まれるからだ。
茨城大学の塚越崇さんらは、約175光年彼方の恒星「うみへび座TW星」をアルマ望遠鏡で電波観測した。年齢1000万歳と若いこの星の周りには原始惑星系円盤が存在し、LPレコードの溝のような複数の隙間も見つかっている。円盤の中に惑星が存在するとこうした隙間ができることが理論的に予想されているので、隙間の構造を調べれば惑星形成の過程や様子がわかるはずだ。
塚越さんらの研究では、半径22天文単位(1天文単位は太陽から地球までの距離)のよく目立つ隙間に着目し、2波長の電波で観測を行った。異なる周波数の電波の強度は塵の大きさに関係しているため、強度を比較することで、円盤内の塵の大きさが場所によってどのように異なっているのかがわかる。
観測から、この隙間では大きい塵(数mm)が少なく、小さい塵(数μm)が多く残っていることが明らかになった。円盤内に惑星が存在し隙間を作っている場合、円盤のガスと塵の相互作用によって大きめの塵が隙間の中からはじき出され、隙間の中には小さい塵のみが残ると予想されている。今回の観測結果はこの予想とよく一致している。観測結果と理論研究との比較によると、惑星の重さは海王星より少し重いくらいであることがわかる。
さらに、中心星から22天文単位という距離は太陽系では天王星と海王星の軌道の間に相当すること、うみへび座TW星が太陽とほぼ同じ重さであることを考えると、この隙間で誕生している惑星は天王星や海王星とよく似た巨大氷惑星である可能性が高いと考えられる。
今後の研究では、電波偏光をとらえる観測によって塵の大きさをより正確に見積もることを目指すという。また、隙間でのガスの量を調べる観測で、惑星の質量をさらに精度よく求めることもできるだろう。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡: 巨大氷惑星の形成現場を捉えた—アルマ望遠鏡で見つけた海王星サイズの惑星形成の証拠—
- The Astrophysical Journal Letters: A Gap with a Deficit of Large Grains in the Protoplanetary Disk around TW Hya 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- アルマ望遠鏡: http://alma.mtk.nao.ac.jp/
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