フィラエが地球へ送信したデータの分析進められる
【2014年11月19日 ヨーロッパ宇宙機関/Phys.Org】
「フィラエ」が今月12日に母船の探査機「ロゼッタ」から分離された時、着陸を待つことなく多目的センサー「MUPUS」で彗星周辺の環境観測を開始していた。MUPUSの一連の機器のうち温度計や加速度計は、発射に失敗した機体固定用のくい(銛)といっしょに収納されていたため、残念ながらそれらのデータは得られなかった。だが機体に取り付けられていた温度分布図作成器は、下降中および3回のタッチダウンの最中にも測定し続け、フィラエの最終着陸点の温度は摂氏マイナス160度より低いことがわかった。
フィラエに搭載された観測装置(提供:ESA/ATG medialab)
土壌サンプルや気化しやすい化合物の分析を行う「COSAC」からは、着陸直後に大気中の有機分子が検出されている。
プローブ(探針)は塵の層に刺さり、さらにその下の層に進んだが、モーターのパワーを最大に上げても数mmより深く打ち込むことはできなかった。「実験室における計測データと比較してみると、かちかちに凍った氷くらい硬い層に出くわしてしまったと思われます」(MUPUS主任研究員のTilman Spohnさん)という。
温度分布測定とプローブの打ち込みの結果から、彗星表面は厚さ10~20cmの塵の層で覆われ、その下には氷、または氷と塵の混合物の硬い層があるという初期評価が下された。ロゼッタの観測から彗星核全体では低密度であることがわかっているので、さらに深いところでは氷は隙間の多い、すかすかな構造と思われる。
「今後じゅうぶんな電力を得てMUPUSが再び作動すれば、プローブが差し込まれた層を直接観測でき、太陽に接近するにつれて起こる変化を見ることができるでしょう」(Spohnさん)。
ロゼッタのOSIRISカメラによるフィラエ(下降し、最初のタッチダウンからリバウンドしたようす)(提供:ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA)
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の位置と軌道
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、彗星の設定日時における位置を表示することができます。
〈参照〉
- ESA: Philae settles in dust-covered ice
- Phys.Org: Comet probe 'sniffed' organic molecules, early data show
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/
- Twitter:
- アストロアーツ:
- 星空ガイド: 天文の基礎知識 彗星
- 投稿画像ギャラリー: 彗星・小惑星
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
- 「The Greatest Comets in History」
- 「彗星衝突計画 ディープ・インパクト」 DVD
〈関連ニュース〉
- 2014/11/17 - 彗星表面の直接探査に成功 大任果たしフィラエ冬眠
- 2014/11/14 - 彗星表面からフィラエが見た初めての景色
- 2014/11/13 - 史上初の快挙、フィラエが彗星表面に着陸
- 2014/11/12 - フィラエ分離成功 史上初彗星着陸の報は深夜1時ごろ
- 2004/10/17 - 探査機ロゼッタ、彗星と自撮り2ショット
- 2014/10/06 - 迫力満点、「ロゼッタ」が間近で見た彗星ジェット
- 2014/09/17 - ロゼッタの着陸機フィラエ、降下場所は彗星の「アヒルの頭」
- 2014/08/27 - 史上初の彗星着陸に向け、探査機ロゼッタが調査中
- 2014/08/06 - 探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着
- 2014/07/18 - チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星はアヒル型
- 2014/07/01 - チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星、1秒にコップ2杯の水を放出
- 2014/05/20 - 探査機ロゼッタがとらえたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
- 2014/01/21 - 画期的彗星探査に向け、探査機ロゼッタが冬眠から復帰
- 2011/06/09 - 彗星探査機「ロゼッタ」、2014年までしばし冬眠へ
- 2008/09/08 - 宇宙のダイヤをかすめた彗星探査機
- 2007/11/19 - ESAの彗星探査機ロゼッタがとらえた夜側の地球
- 2004/06/30 - 地球の大量の水は、どこからきたのか?
- 2004/03/01 - 彗星探査機ロゼッタの打ち上げ成功
〈関連製品・商品〉
関連記事
- 2024/10/11 2024年10月 紫金山・アトラス彗星が4等前後
- 2024/10/04 10月11日にYouTubeライブ「ステラナビゲータで紫金山・アトラス彗星を100倍楽しむ!」
- 2024/09/30 公式ブログ:【ステラショット3】彗星を留めて撮影!「メトカーフガイド」新搭載
- 2024/09/20 2024年9月 紫金山・アトラス彗星が3等前後
- 2024/09/18 公式ブログ: 【思うがままにならない】○○だった彗星たち【それが魅力】
- 2024/09/18 【特集】紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
- 2024/04/11 17日に「ステライメージで彗星画像処理」ライブ配信
- 2024/03/28 4月3日にYouTubeライブ「ステラナビゲータでポン・ブルックス彗星を楽しむ!」
- 2024/03/25 2024年4月 ポン・ブルックス彗星が4等前後
- 2024/03/21 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星写真を仕上げる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/18 ほうき星を見て、撮って、処理する:メトカーフコンポジットで尾や頭部を描出(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/14 ほうき星を見て、撮って、処理する:ステラショットで彗星を拡大撮影(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/12 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星拡大撮影の計画を立てる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/08 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星星景撮影の計画を立てる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/08 2024年3月 ポン・ブルックス彗星が5等前後
- 2024/02/07 【使いこなし講座】あなたの知らないステラナビゲータシリーズ~彗星がやってくる~
- 2024/01/29 リュウグウに彗星の塵が衝突した痕跡を発見
- 2024/01/24 2023年度日本天文学会各賞の受賞者発表 板垣さん、西村さんら
- 2023/11/28 彗星コマ中のアンモニア分子の起源
- 2023/08/25 2023年9月 西村彗星が5等前後