見た目以上に大きかった、内側ほど若い不思議な銀河
【2016年7月13日 NASA JPL】
くじら座の方向2億5000万光年彼方にある銀河UGC 1382はこれまで、平凡で小さな楕円銀河だと考えられていた。こうしたごく普通の楕円銀河を探していた米・ペンシルバニア州立大学のLea Hagenさんたちの研究チームは、NASAの紫外線天文衛星「GALEX」による観測画像を見ていたときに、UGC 1382が大きく広がっていることに気が付いた。
「UGC 1382には、これまでだれも気づかなかった、外へ向かって渦を巻いて伸びる腕が見られました。これは楕円銀河にはあるはずのないものです。そこで銀河の正体と、一体どのように形成されたのかを調べることにしたのです」(Hagenさん)。
GALEXのデータにスローン・デジタル・スカイサーベイや2μm全天サーベイ(2MASS)、NASAの赤外線天文衛星「WISE」、米国立電波天文台のデータなどを合わせた多波長観測から、このミステリアスな銀河のモデルが作られた。UGC 1382の直径は71万8000光年と天の川銀河の7倍以上大きく、孤立した円盤銀河としては最大級である。
最も驚きだった点は、内側ほど星の年齢が若いということだ。ほとんどの銀河では最も内側の部分が最初に形成されるため、その部分には最も年老いた星が含まれ、銀河が成長すると外側の領域に若い星が生まれる。しかしUGC 1382では状況が異なっている。「まるで外側よりも内側の年輪が若い木を見つけたようなものです」(米・カーネギー研究所 Mark Seibertさん)。
内側と外側は元々別のもので、それぞれが独立に進化した後で合体してUGC 1382が作られたのかもしれない。まず小さな銀河がいくつか誕生し、次に渦巻きのないレンズ状銀河が近くに作られ、そこへ先に誕生していた小さな銀河が落ちていって外側の部分となったという考え方だ。
〈参照〉
- NASA JPL: 'Frankenstein' Galaxy Surprises Astronomers
- The Astrophysical Journal: On the Classification of UGC1382 as a Giant Low Surface Brightness Galaxy 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- NASA: http://www.nasa.gov/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 2009/02/12 - 一風変わった銀河NGC 4921
- 2007/04/04 - 異常な巨大銀河?…実は近くの矮小銀河でした
関連記事
- 2024/03/21 市民天文学とAIで渦巻銀河とリング銀河を大量発見
- 2024/01/16 最遠の渦巻銀河の円盤に伝わる震動を検出
- 2022/12/09 JWSTの画像に写っていた「赤い渦巻銀河」
- 2022/06/01 遠方宇宙でも銀河の成長を妨げるブラックホール
- 2021/05/31 観測史上最古の渦巻き構造を持つ銀河
- 2020/08/14 渦巻銀河を人工知能で分類
- 2020/04/28 銀河衝突で刺激された超大質量ブラックホールから噴き出すジェット
- 2019/10/24 超高速で回転する超大型渦巻銀河
- 2019/10/18 宇宙を漂うクラゲの触手のような「銀河の尾」
- 2019/01/18 アルマ望遠鏡が明かす銀河内の「星の工場」
- 2018/05/24 近傍銀河の紫外線サーベイから作られた星団と恒星の初カタログ
- 2017/07/27 渦巻銀河の腕と中心ブラックホールの質量に強い関連性
- 2017/07/03 初検出、超大質量ブラックホールのペアの動き
- 2017/06/28 初期宇宙に存在した、星生成を止めた大質量の円盤銀河
- 2017/04/25 ハッブル宇宙望遠鏡、打ち上げ27周年
- 2016/06/13 巨大ブラックホールに吸い込まれる冷たいガス雲の塊
- 2015/08/11 巨大楕円銀河に見られる星形成の自己制御サイクル
- 2015/07/01 数十億年かけて渦巻銀河を飲み込んだ巨大楕円銀河M87
- 2015/02/12 ティーカップの中のブラックホール嵐
- 2014/06/04 材料はあるのに星が生まれない楕円銀河