急増光中の若い星の周りに水のスノーライン

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アルマ望遠鏡による若い星の観測で、その周りを取り囲む原始惑星系円盤が詳細にとらえられ、水が凍る・凍らないの境界線である「スノーライン」がはっきりと示された。急増光中の星の周りに水のスノーラインが発見されたのは初めてのことで、惑星形成を理解する上で重要な観測結果である。

【2016年7月14日 アルマ望遠鏡NRAO

スノーラインとは、原始惑星系円盤内において温度が物質の昇華温度に達する境界領域のことで、その内側では中心星の光を受け温度が高いため物質は気体に、外側では低温のため氷の状態になっている。スノーラインの位置は物質や中心星の明るさによって異なるが、たとえば太陽系における水のスノーラインは火星と木星の軌道の中間付近、太陽から3天文単位(1天文単位=約1億5000万km)ほどのところにあり、その内側で岩石惑星が、外側で巨大ガス惑星が作られたと考えられている。

チリ・ディエゴ・ポルタレス大学のLucas Ciezaさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、1350光年彼方のオリオン座大星雲内にあるオリオン座V883星の周囲に広がる原始惑星系円盤を観測し、円盤内に水のスノーラインとみられるリング構造を発見した。オリオン座V883星は「オリオン座FU星型バースト」と呼ばれる一時的な大増光を見せている若い星で、こうした天体で水のスノーラインが明確にとらえられたのは初めてのことだ。

オリオン座V883星の質量は太陽の1.3倍程度だが明るさは400倍もあり、そのスノーラインは中心星から約40天文単位(太陽系では海王星軌道よりも外側)と遠いところに位置している。円盤から中心星に大量の物質が落下することによって急激に中心星が明るくなり、円盤の温度も急上昇し、それに応じてスノーラインが10倍以上も外側に移動した結果だと考えられている。

オリオン座V883星を取り囲むスノーラインの想像図
若い星オリオン座V883星を取り囲むスノーラインの想像図。中心星から40天文単位よりも遠いところで塵粒子の表面を氷が覆っている様子(提供:A. Angelich (NRAO/AUI/NSF))

観測ではスノーラインの外側で塵の密度が非常に小さくなっており、近年のシミュレーション研究と一致した結果となっている。塵同士が衝突する際、塵を覆う氷がクッションとして働くことで、塵は破壊されることなく合体して大きくなりやすい。そのため塵の合体成長がどんどん進み、塵粒子の個数としては減少するのだ。

このように氷は塵粒子の成長や小惑星・彗星の形成、さらには惑星の成長にも非常に重要な役割を果たす。また、星は誕生と成長の過程で「オリオン座FU星型バースト」を何度も起こすと考えられている。今回の観測は、惑星がどのように生まれ進化してきたのかを理解する上で、非常に重要な意味を持つものである。