生命進化の命運を握る惑星系の「境界線」
【2012年11月2日 NASA】
惑星で生命が誕生し進化していくためには、ちょうど良い大きさの小惑星帯が必要かもしれない。そして、そのためには木星のような巨大惑星の位置も重要になってくる。アメリカの研究チームが新たに提唱する、特別な星・地球が生まれるための特別な条件とは。
Rebecca Martinさん(コロラド大学)とMario Livioさん(宇宙望遠鏡科学研究所)の研究によれば、恒星の周りに形成される小惑星帯のサイズと位置は、地球型惑星に高等生物が誕生する可能性と密接に関係しているという。
小惑星が地球上に大量絶滅をもたらす天体としても知られていることを考えると、意外に思うかもしれない。しかし、小惑星衝突は複雑な生命体の誕生と進化のきっかけにもなり得るという。
原始地球に水や有機化合物を運んできたのも、小惑星だったかもしれない。生命の進化が長い時期にわたって突発的に発生してきたという「断続平衡説」によれば、時々襲う小惑星によって地球の環境が激変し、様々な種は生き抜くための戦略として適応していくことで進化がうながされたという説明も可能だ。
「地球型惑星に生命の進化をもたらす、ちょうどよい密度の小惑星帯が形成されるためには、ちょうど良い位置に巨大惑星が存在することが必要です。今までの観測によれば、そのような惑星系はごく一部にすぎません。つまり、我々の太陽系は思っていたより特別なケースかもしれないのです」(Martinさん)。
研究によれば、巨大なガス惑星の存在は小惑星帯が形成された場所と無関係ではないという。火星軌道と木星軌道にはさまれた太陽系の小惑星帯の位置は、水のような揮発性物質が凍るか凍らないかの境界線(「スノーライン」と呼ばれる)に近い。木星がスノーラインのすぐ外側で形成されたばかりの時、軌道のすぐ内側にある物質は木星の強力な重力に阻害されて惑星へと成長できず、さらに衝突・分解した。その結果残った岩石が現在の小惑星になっている。
「そのような理想的な環境を持つためには、木星のような巨大惑星が小惑星帯のすぐ外側に存在して、なおかつ小惑星帯の中に入り込まない程度にちょっとだけ移動する必要があります。惑星の軌道が大きく変わると、小惑星帯はすぐに解体されてしまいます。かといって軌道変化が全くなければ、小惑星帯が成長しすぎてしまい、巨大な小惑星が頻繁に襲ってきて、生命も誕生できないでしょう」(Livioさん)。
MartinさんとLivioさんは、太陽系以外の小惑星帯も常にスノーラインに位置すると想定した。これを確かめるために、中心星の質量に基づいて原始惑星系円盤のモデルを作成し、スノーラインの位置を計算した。そしてNASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」のデータで、小惑星帯の存在を示す高温円盤を持つ90個の恒星のデータを調査したところ、理論予測とぴったり一致していた。
また、巨大系外惑星を調査したところ、520個のうちスノーラインの外側に位置していたのはたったの19個であることがわかった。このことから、スノーライン以遠で形成した巨大惑星のほとんどは内側に移動してしまい、生命進化を引き起こすために必要な小惑星環境が作れないことが考えられる。たった4%以下の惑星系が、ちょうど良い小惑星帯をもっている可能性があるということだ。
「我々のシナリオに基づくならば、複雑な生命体を見つけるためには、巨大惑星がスノーラインの外側にある惑星系を集中して探すのがよいでしょう(Livioさん)。