惑星の多くは一人ぼっち?主星を持たない系外惑星を発見
【2011年5月19日 名古屋大学】
惑星といえば通常恒星の周りを回る天体を指すが、そのような認識を覆す「浮遊惑星」という惑星が発見された。浮遊惑星は主星を持っておらず、今回発見された数を考えるとこうした天体は「星の数より多い」かもしれないことがわかった。
1995年に初めて系外惑星が発見されて以来、500個以上もの系外惑星がこれまで見つかっている。系外惑星の探査方法というと、主星の周りを回る惑星を直接撮像する方法や、惑星によって主星が「ふらつく」様子を観測する視線速度法(ドップラー法)、惑星が主星の前を横切るときに減光するのを見るトランジット法などが挙げられる。
しかしこれらの系外惑星探査方法は全て主星の周りを回る惑星に限定され、ただ宇宙空間を漂っているだけの浮遊惑星を発見することはできない。これまで浮遊惑星の存在は理論的に予測されていたが、今回初めて名古屋大学などを含む国際研究チームが発見した。
ニュージーランドにあるMt.John天文台の1.8m広視野望遠鏡と、チリのラスカンパナス天文台にある1.3mワルシャワ望遠鏡で、重力マイクロレンズ現象による系外惑星探査を行い、今回の発見へとつながった。重力マイクロレンズ現象とは、星の前を別の重力天体が横切ったときにこの重力天体がレンズのような役割を果たして増光する現象を指す。これは一般相対性理論で言われている、光が重力によって曲げられる効果によって起き、このような重力マイクロレンズ現象は100万個の星を見て1個起こる程度という非常に稀な現象である。
通常の主星を持つ系外惑星探査でもこの重力マイクロレンズ現象を用いることがあるが、その場合に増光する期間は通常10-20日程度あるのに対し、この浮遊惑星では1-2日程度しか増光しないと予想されていた。このため1日のうちに何度も観測する必要があり、また稀な現象でもあるために1日程度の増光を観測することが難しかった。
今回2006年から2007年にかけての観測データを解析したところ、増光期間が2日以下の増光現象を10例検出し、この増光を引き起こした天体は木星サイズの浮遊惑星であることがわかった。主星が遠すぎて確認できないような大きな公転軌道を持っている可能性や、恒星あるいは恒星になりそこねた褐色矮星である可能性は他の観測例や10例という発見例の多さから否定できるとしている。
このような浮遊惑星のほとんどは普通の惑星と同じように惑星系円盤で形成し、その後他の惑星によって弾き飛ばされてしまったと考えられる。現在の観測技術では木星質量より小さい浮遊惑星を発見することはできないが、地球質量程度の小さな惑星はより弾き飛ばされやすいので、この宇宙には恒星よりも多くの浮遊惑星が存在していることが予想される。