ハッブル宇宙望遠鏡、太陽系外惑星の大気に酸素と炭素を発見

【2004年2月4日 ESA Information Centre

「オシリス」という名前の有名な太陽系外惑星、HD 209458bの大気中に酸素と炭素が存在し、急激な蒸発を起こしていることが、NASAESA(ヨーロッパ宇宙機関)が共同運営するハッブル宇宙望遠鏡によって観測された。太陽系外の惑星に酸素や炭素が発見されたのは初めてのことである。

(HD 209458bと恒星の想像図)

HD 209458bと恒星の想像図。ラグビーボールのように広がった酸素と炭素の外層が惑星を包んでいる(提供:European Space Agency and Alfred Vidal-Madjar (Institut d'Astrophysique de Paris, CNRS, France))

HD 209458b・オシリスは、大きさが木星の1.3倍、質量が木星の0.7倍(地球の220倍)で、恒星からたった700万キロメートル(太陽から水星までの8分の1)の軌道を3.5日で公転している。このように恒星の至近距離を公転する巨大な惑星は「ホット・ジュピター」と呼ばれている。オシリスはいろいろな面で「初めて」の発見をもたらしてくれている惑星で、これまでに以下のような栄誉に輝いている。

  • 恒星面を通過するところが捉えられた初めての惑星
  • 大気を持つことが発見された初めての惑星
  • 水素の大気が蒸発しているところが観測された初めての惑星

そして今回、「酸素と炭素が発見された初めての惑星」の称号をも得たのである。

酸素や炭素と聞くとなんらかの生命体が存在すると期待しがちだが、研究者によれば、われわれの太陽系では木星や土星にも発見されているので、特に驚くべきことではないとのことだ。もっとも、オシリスの表面の温度は摂氏1000度ほどもあるので、生命にはひじょうに過酷な環境である。

生命体の存在よりも、むしろ、酸素や炭素がどこにどのように存在しているかという点がたいへん興味深いという。木星や土星では酸素や炭素が大気中の水やメタンと結合しており、酸素や炭素原子を見ることはできないが、オシリスではその原始レベルまで壊れた状態になっているのだ。

また、これらの原子が惑星の上層部に見られることから、オシリスでは大気の噴出しが起きていると強く考えられている。剥ぎ取られるガスの速度は時速35,000キロメートル以上もの猛スピードになっており、鉄などの重い物質も同時に吹き飛ばされていると推測されている。このように、ひじょうに特徴的な蒸発のメカニズムを持つ、ガスを失った巨大惑星という新しい種類の惑星は、今後地上と宇宙からの観測で次々と見つかってくるだろう。

なお、月刊星ナビ2004年2月号で、「アマチュアでも観測可能「太陽系外惑星」」と題した特集を組んでいる。系外惑星探査に興味のある方は、ぜひご覧いただきたい。