衛星「ガイア」のデータから発見、シリウスの隣の新星団

このエントリーをはてなブックマークに追加
位置天文衛星「ガイア」の観測データから、これまで検出されていなかった大質量星団が発見された。そのうち1つはシリウスのすぐそばにある。

【2017年11月22日 ヨーロッパ宇宙機関

18世紀後半、天文学者ウィリアム・ハーシェルと妹カロラインは、全天を600以上の領域に分けてそれぞれの範囲内の星を数え、天の川銀河の形を人類で初めて推定した。それから200年以上の時が過ぎた現在、同じように「領域内の星を数える」手法によって、新しい星団が発見された。

米・カーネギーメロン大学のSergey E. Koposovさんたちの研究チームはこれまで様々な観測のデータを用いて、星団や天の川銀河の伴銀河を探してきた。星が予想以上に密集している領域を見つければ、そこに星団や伴銀河があると考えられる。

昨年公開された、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データから作られた10億個以上の星を含むカタログのデータを分析していたKoposovさんは、おおいぬ座の1等星シリウスの近くにこれまで知られていなかった星の集団を見つけた。ずっと昔に見つかっていてもおかしくない天体だが、シリウスの輝きに隠されていたのだ。

夜空に見える星の中で最も明るいシリウスのような輝星は、実在しない像を作り出す可能性があるため、データに現れているものが本当の星かどうか慎重に判断しなければならない。「シリウスの影響による人工的なものに違いない」と考えたKoposovさんは別の領域を調べ始めたものの、この領域が頭から離れなかった。「シリウスによってたくさんの虚像が発生するはずがない、これは変だと思いました。そこでもう一度この領域を見て、本物の天体であることに気づいたのです」(Koposovさん)。

新発見された星団「Gaia 1」は1万5000光年の距離に位置し、30光年ほどの範囲内に太陽数千個分に相当する星々が集まっている大質量の散開星団である。

シリウスと散開星団「Gaia 1」
シリウス(画像中央やや右の輝星)と、新発見された散開星団「Gaia 1」(画像中央)。間隔は10分角(満月の直径の約3分の1)しか離れていない(提供:Sergey Koposov; NASA/JPL; D. Lang, 2014; A.M. Meisner et al. 2017)

オーストラリア天文台のJeffrey Simpsonさんが地上の望遠鏡を使って星団に属する41個の星を追加観測したところ、星団の年齢が30億歳であることがわかった。一般に散開星団の星々の年齢は数億歳以下であり、別種の星団である球状星団の場合は100億歳以上のことが多く、その中間である30億歳という年齢の星団は天の川銀河内にはそう多くない。Gaia 1は、2種類の星団間を理解する上で重要な橋渡しの役割を果たすかもしれない。

また、この星団は軌道も変わっているようだ。ほとんどの散開星団は銀河面近くに位置し、約9割の星団は銀河面から1000光年も離れることがないのに対し、Gaia 1は銀河面から上下に3000光年以上も離れたところまで動くようである。シミュレーションによれば、こうした軌道を持つ星団はバラバラに散らばると予測され、30億年も生き残れないと考えられる。「モデルの予測との一致を目指ざした、さらなる研究が必要です」(Simpsonさん)。

Gaia1 が天の川銀河の外で作られ、その後に銀河内に落ち込んできたという可能性も挙げられたが、星の化学組成を調べたところ、星団が天の川銀河内で形成された場合の予測と同じだったため、謎は未解決のままである。

ガイアの観測データは新しい星団の発見と同時に、これまでに報告されている共通の起源をもつ星の群「アソシエーション」の存在の確認にも利用される。「ガイアのデータでは星の動きもわかるので、どの星が本当に散開星団を形成しているのか確認できます」(アルゼンチン国立科学技術調査委員会 Andrés E. Piattiさん)。Piattiさんの研究によると、あるカタログに収録されている散開星団15個のうち10個は実際には星団ではなかったという。

来年4月に予定されている2回目のデータリリースでは、正確な星の固有運動や過去にない数の星までの距離などが明らかになる。これまでは遠過ぎたり光が拡散し過ぎて見えなかったり、星の間で埋もれたりした星団が、より効率的に見つかるだろう。「次回のデータリリースで、新しい種類に属する天体も発見できることを願っています」(Simpsonさん)。

星団の見つけ方の説明動画(提供:ESA)