- Dorling Kindersley Publishers Ltd. 刊
- 27.8 x 22cm、64ページ
- 1998年10月
- ISBN 978-0751361360
- 価格 952円
- ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。
本書評ではこれまでに数えきれないほどDK(DORLING KINDERSLEY)シリーズを取り上げてきた。本書ももちろんその一冊。冒頭の、まるでエリダヌス座に時計が流れているようなイラストからしてまことにユニーク。時の流れが遡れない事を一目瞭然に表現するそのアイディアが素晴らしい。
同ページの卵・板チョコ・その他からスフレの作り方も、種々な材料で宇宙がベークできることを簡単明瞭に示し、図鑑とはこうでなければと思わせられる。 近年のオリンピックで日本が金メダルを取れないのも、そもそも英米人は発想が違うのだ。科学の進歩発展に仕分け人がガタガタいう筋合いのものではない。
本書を見れば英語が読めなくとも英米人の発想がよくわかるはず。エラトステネスが地球のサイズをもう2000年以上前に観測から求めたなどは、日本でできっこなかったことが示されて何ともはや悔しい限りである。
国粋主義の方に本書はお薦めしない。なんでも日本万歳の人に理解できるはずがないからだ。図鑑といえば日本ではイコール子供向けだが、本書は正しく大人の科学者向け図鑑なのである、いつも通りのDKである。樹の年輪が写真で大きく載っている。細かく気候変動がわかる仕組みも。こんな本、日本にないですよ!
かと思えば、知る人ぞ知るオルバースの逆理やレーマーの光速度測定原理、アインシュタインの相対性理論を見開き2ページのイラストで懇切丁寧に説明してくれる。ホイルの定常理論から雑然とした棚を写した映像が、実に意味深い関係にあることを簡単な英文で説明するなんていう芸当は、残念ながら日本の文化にない。この辺が日本に科学が根付かない正確な理由なのだろう。ダメですねぇ。
シュレディンガー、ファインマン、プランク、クラインなど現代物理学、特に時空間について、知ったかぶりに語ろうと思う人はぜひ本書を読んでからにして欲しい。著者もあの有名なグリビン夫妻。本当に面白い本ですよ!
残念なことに、みなさんに絶対にお読みいただきたい本なのだが、本書は丸の内の有名書店で洋書特価本として購入した。たぶん売れなかったためだろう。購入は、Amazon経由で探してみてほしい。