- 岩波書店
- B6判、121ページ
- ISBN 978-4-00-007495-7
- 価格 1,260円
知る人ぞ知る、著者と副題。松井氏は東大地球物理学中興の祖であり、日本の惑星科学の元祖とも言える人物。副題は、メキシコ・ユカタン半島への隕石落下が恐竜絶滅をもたらしたという、古生物学界ではともかく、プラネタリウム業界では今や定番の学説を示す。本書によれば、このプロジェクトの正式名称は「6500万年前の衝突による地球システム擾乱の研究」というのだそうだ。
評者は、1999年に刊行された本書の旧版にもお世話になった。本書は隕石衝突による恐竜絶滅説のバイブルなのだ。評者も40年前の大学学部生時代に経験した地質巡検で、フィールドワークの重要性を身に染みて知っているが、本書は、松井先生を中心とする国際協力チームによるチチュルブ・クレーター周辺のフィールドワークを詳細に教えてくれる。旧版はその開始までのエピソードを第一報的に紹介してくれたものだった。
このたびの改版はプロジェクトの集大成であり、発見と研究の現状を語る第6章が加わって、学説の決定版ということができる。プラネタリウムの番組では、恐竜モノは夏休みの子供向けで定番となりつつあり、その際、番組担当者は本書の全てを理解しておく必要があるだろう。また、地質学的研究に強い天文関係者には、本書を特におすすめしたい。