- 岩波書店
- 四六変型判、254ページ
- ISBN4-00-022863-3
- 価格 2,940円
4000年以上も文明を維持しつづけた中国に、なぜ科学文明が形成されなかったかの問いは、著者が同じ東洋人である日本人科学者全てに問いかける。現代日本教育界を覆う科学離れの影を追い詰める鍵がこの辺りにあるかもしれないと、評者はこの本を読みながら考え続けた。さらにまた、著者が主張される通り、現代世界には西欧近代科学文明(結局強大な軍事力に収斂される)以外、いかなる文明も存在していない。例えば戦争になれば、民族・宗派・教派問わず科学文明兵器を使わない軍隊はない。著者の問いかけは、その意味で極めて重厚である。だが宇宙観の変遷に限れば、その過程の検討を含めて、我々天文を学ぶ者全てに共通の話題であり、西欧型宇宙観とは別の、例えば日本の天皇制のルーツである中国の「上天・上帝」信仰は、中国の牽牛・織女・帝の説話に表れる。その意味で、本書は広範囲のみなさんに読まれるべき重要な書物だ。ぜひ熟読をお勧めしたい。