- 岩波書店
- 18.4×12.8cm、128ページ
- ISBN 978-4000296526
- 価格 1,296円
各章冒頭は必ず宮沢賢治童話の一節から始まる、天文書らしからぬ実にユニークな本。それも銀河鉄道一色ではありません。第5章冒頭では「グスコーブドリの伝記」だが、章途中では「土神ときつね」が語られ、そこには火星とアンタレスの会合が描かれる。残念ながら本書でも、そして賢治の原作や他書でもその会合がいつだったのか不明なので、評者は密かにそれが賢治の生涯(1896年8月27日〜1933年9月21日)のいつのことだったかを、いずれ明らかにしたいと思う。現時点での簡単な調査からは、僅か9歳時の1905年9月5日夕方0.1等の火星がアンタレスに2度15分まで近づいた時では、と考えている。今後の調査報告にご期待を!
それはともかく、評者は本書著者の博学を率直に湛えたいと思う。もちろん本書の主題である惑星鉱物学は凄い。これこそ評者の学生時代(半世紀前)には想像すらできなかったことで、天文学と鉱物学は別所の科学だと思っていた。どっちが進歩したのかは別として、進歩というより進化しましたね。これこそ科学の醍醐味だ! というのを実感させてくれるのが、本書である。その意味で、評者は著者に感謝申し上げたい。
122頁という電車の中でも気軽に読める本、と思ったら大間違いで、いつも持ち歩いている雑記帳を丸ごと1冊書き潰してしまった。