- 岩波新書 刊
- 10.8×17.3cm、183ページ
- 1956年7月10日第1刷、2014年10月15日第54刷
- ISBN 4-00-416012-XC0244
帯に「読むまではどうでもいいと思っていた」とある。だが天文ファンなら読む前からどうでもよくない本だ。本書を読まずして天文を語る事無かれ。日本天文書中のバイブル。なぜなら筆者が知る限り、一度も改訂されずに54回も刷られた天文書は他にないからだ。
筆者が初めて本書を手にしたのは高校1年の時、地学の先生に「読め!」と言われたからだ。当時は難しかったけれど不思議と感動したことを覚えている。だって、勃興しつつあった日本の電波天文学の父が筆者だからだ。なかでもはくちょう座A(当時はラジオ星と言われた)の記事には「そんな天体あるの!」と感動した。だが今改めて本書で見ると、意外にもその記述はわずか3ページしかなかった。他の部分にも大きく感銘を受けた証拠である。
60年近く前に出版された本をここにご紹介するのは、本書が名著であるからだけではない。例えばアンドロメダ大銀河は当然ながらアンドロメダ大星雲と記されており、その距離も150万光年である(数年前まで68万光年と信じられていたとある)。
また、ブラックホール、ダークエネルギーはもちろん、インフレーションやビッグバンすら一言も触れられていない。でも、今年3月に閉館する渋谷東急プラザのK書店店頭で山積みされた本書を見たとき、筆写は速攻カウンターに並んでいた。筆者は、天下の岩波書店の方針に心から敬意を表したい。繰り返すが本書はまさに歴史的名著、同感なさる方も多いはずだ。