- 岩波書店
- 新書判、206ページ
- ISBN 978-4-00-416052-6
- 価格 735円
評者は1965年に刊行された本書の初版(第1刷)本を持っている。著者青木靖三さんは1977年にお亡くなりになった科学史の専門家で、本書は当時ガリレオに関するほとんど唯一といってよい紹介書だった。現今書店に並ぶ美麗な本と違って、写真はガリレオの肖像画一枚だけ、図版も当時の欧州地図一枚だけ、あとは全部文字だけ。それを評者はむさぼるように読んだ記憶がある。おかげで、初版本の表紙はぼろぼろ、中のページも一部は千切れている。
神田の古著店では高額の値札がつき、手が出ないまま、今年を迎えた。忘れかけていた頃、新聞で復刻版出版の広告を読み、すぐに評者は書店に跳んだ。本書は絶対にこのコーナーで紹介しなければいけない本で、あいにく手持ちのぼろぼろの表紙にはISBN番号が見当たらない(多分当時はこの制度が無かった)からである。
そこで落ち着いて「はじめに」を読んだところ、はたと思いついた。青木先生が初版を用意していた年が1964年で、ガリレオが生まれたのが1564年。つまり生誕400周年だった。今年はガリレオが望遠鏡で月を見て400周年だ。因縁ですよね。本書は今年こそ復刊されねばならなかったし、今年こそ皆さんに読まれねばならなかったのだ。
幸いその後ガリレオに関する研究が進み、たくさんの関係書が出版され、当時の苦労がウソのような昨今だが、本書はその基点としていまだに大きな価値を持つと思う。中でも、問題の第二次ガリレオ裁判の経過とそこで下された判決文(全文)については、本書の一番の価値だと評者は考える。ぜひ、ガリレオに関して深い関心を持つみなさんは、本書の復刊を(評者と共に)お祝いいただきたい。