- 岩波書店
- 新書判、196ページ
- ISBN4-00-431087-3
- 価格 1,050円
一方では著者の言葉どおり「ピカピカの最先端天文学」の本。片一方では共著者宮下氏が建設開始から撮り貯められたすばらしい記録(かつ芸術でもある)写真集。その二面が、見事に盛り込まれ編集された、とても1000円とは思えない大新書である。第1章ではファーストライト天体に選ばれたオリオン大星雲の写真を説明しながら、すばる望遠鏡の性能について解説し、第2章では特に高性能なシュープライム・カムで得られた最高度の天体画像が提示された後、第3章では一転してすばる望遠鏡の建設記録集となる。ドーム内火災で亡くなられた方々のお名前を、評者は本書で初めて知った。ご冥福を評者も祈りたい。
それと同時に望遠鏡製作に関わられた技術者のみなさんの多大なる熱意についても、切々と伝わってくる。第4章に登場するハワイ原住民のみなさんのふるさとに対する思いが、欧米人にはない多神教的感性を持つ日本人にはわかる、ということを著者同様評者は感じた。
もちろん、科学者としての著者の本領は、後半5〜7章で十分に発揮され、素質としてお持ちであった文学的とも言える文章のすばらしさから、著者が我が国を代表する天文台長になられた資格を十二分にお持ちであることを読み取ることができる。すばるを知ろうと思われる方々には必ずお読みになっていただきたい本である。