- 岩波書店 刊
- 10.6×17.5cm、240ページ
- ISBN 978-4004315698
- 価格 842円
巻末約40冊の横文字参考文献中1/4がガリレオ裁判資料など、3/4が研究書論文。つまり本書は著者の解釈からなる解説書ではなく、当時の裁判記録に基づく客観的な科学書と言って良い。それも相当部分が21世紀になって新たに判ってきた事実で、これまで評者が読んだガリレオ関連日本語資料を時代遅れとさせてしまった。要するに疑問だった事柄ばかりでなく、知らなかった事柄をも氷解させてしまい、今やガリレオ問題は本書によって全て解決したと言ってよい。
例えば1616年の裁判は穏やかな評決だったのに、1633年の二回目が180度異なったのは、背景に宗教戦争があったこと、それを背景に教皇の全くの個人的誤解が重なったことなど、ガリレオとは直接関係しない事柄が原因だったという見方は、納得できるものである。更にあの有名な「それでも地球は動いている」という台詞の如何に関する部分も非常に面白く、ぜひみなさんに読んでいただきたい。時代背景と科学の歴史は、切っても切れないものなのだ。ナポレオンが異端審問所からパリに持ち去るという蛮行が、ガリレオ問題を複雑にさせたというエピソードも、評者は本書で初めて知ることができた。
著者の前書『ガリレオ 庇護者たちの網の中で』(中公新書 1995年刊)も併せてお読みいただくと良いだろう。