- 岩波書店
- 17.2×10.6cm、224ページ
- ISBN 978-4005008384
- 価格 972円
ジュニア向け新書として出版された理由が判らない。本書は立派な内容の大人向著作。表紙のハッブルの肖像写真でもパイプを咥え、パイプはシュミット望遠鏡やヘール望遠鏡などで観測する際も咥えていた、いわばハッブルの代名詞だ。だがそれが命取りになった。
あるいはハッブルがボクサーであることはよく知られているが、高校時代イリノイ州の走り高跳びの記録を持っていること、ハッブルの数学の実力を認めて、「ハッブル君は将来きっと大物になる」と言った中学校の科学教師ハリエット・レーバーの息子が、世界で初めて自作電波望遠鏡を使い、天の川や太陽を観測したグロート・レーバーだった。
また59歳の時心筋梗塞で倒れ、医師から喫煙を禁じられ、その4年後脳卒中で死亡したのだ。死ぬ時は静かに消えたいと周囲に漏らしたことから、妻は死を誰にも伝えず葬式もせず、米国で一般的でない火葬にして、埋葬場所も周囲には伝えられなかった、あるいはロサンゼルス上空の光害によるスモッグの様子をロサンゼルス星雲と呼んだことなどなど、評者が本書で初めて知ったことはメチャクチャ多い。伝記作家クリスチャンセンの本を参考にした伝記ではあるが、とてもとてもジュニア向けではない。勉強になります!
なお、1899年6月23日の皆既月食を自宅で夜通し観測したとあるが、ステラナビゲータによる筆者の調査では月食が起こったのは朝になってからで、見えなかったはずだ。