- 岩波書店
- 17.4×10.6cm、240ページ
- ISBN 978-4005009022
- 価格 990円
本書評を一番に読んでもらいたいのがプラネタリウム解説員だということを、前から申し上げてきたように、プラネタリウムに夜空を堪能しに来る多くのお客様には、本当は本当の夜空で星と語らって戴きたいところなのだが、多分一番なじみ深いのがギリシャ神話だと、野尻抱影先生以来信じられてきた。と言っても、星を相手にギリシャ神話を大声で話しても、多分声は届かないし、星や宇宙人たちはチンプンカンプンだろうし、仕方ないからプラネタリウム来館者の皆さんに聞いてもらうのが一番に違いない。
だが本書は、ギリシャ神話は第四章の30ページのみで、全体の230ページ弱はインド/メソポタミア・エジプト・アフリカ・ケルト・北欧・インドネシア・中国・オセアニア・中南米と北米、そして古事記の神話と、正しく世界の神話である。とくに本書著者のご専門インド神話は圧巻。プラネタリウム社会で生きてきた評者にとっては、まさに初耳学だった。
共通することは、神話が神様から語られたものではなく、それぞれ独特の世界観・環境観・生活観から形成されたことが明確に判る。すなわち人間が創ったものだということ。だってそうでしょう? 人が生まれ、社会が形成され、人々の共通話題の中から、宗教が生まれたのだから。善悪観も民族によって異なることになったのだ。本書を読むと、天国(極楽)や地獄すら、民族によって全く異なることが判りますよ。お勧めします。