- 岩波書店 刊
- 15 x 10.8cm、540ページ
- 2009年10月
- ISBN 978-4006002305
- 価格 1,575円
あとがきによれば、本書は徳間書店創立35周年の1993年に記念出版されたもので、ドイツ語と英語版も出版されているという。もちろん本書はその再刊本である。だが20世紀を終えるに当たってそれまでの、人間とは何で、どこから来てどこに行くのかという、すなわち宇宙空間における人間の「知の体系」を科学史的にまとめようと試みた著者の野心的試みと自負されるだけある、現時点でも価値の高い資料である。そればかりか、惑星探査やハッブル宇宙望遠鏡その他の観測衛星からの膨大な研究にも負けないほどの知的スタンスが貫かれた本である。
ほとんど旧版のままで読むことができるという。だから読者のみなさんも、ぜひその目で20世紀終盤でここまで天文学が進んでいたのだということを本書から読み取っていただき、その後の進歩・発展に思いをはせていただきたい。
評者は五島時代、星の会一般クラス(成人対象)の講師の依頼のため、先生の東大地球物理学教室の研究室に伺ったことがある。そのとき招き入れられたお部屋の、まあ学者らしいお部屋だったことが脳裏に焼きついている。先生のお顔が本の山の向こうで、座ると見えなかったのだ。評者がそれを真似たことから、今の我が家の書斎コーナーがある。地震で危険!立ち入り禁止状態で何とかそこで寝泊りしているのだが。だがついに先生の学者度の足元にも及んでいない。
先生の天文学についての知識と見解が、こんなに深く広いとは…。文庫本とはいえ、記念出版に値する全編540ページの大書。読破は大変ですよ!でも、あちこちに後世に残るべき珠玉の名言が。特に評者のお勧めは、「自然科学に限らず人文科学も社会科学も、自然の一部である我々人類の営みを通じて、結局は自然そのものを理解しようとする学問だといっていいだろう。そして自然についての理解を深めるたびに、文明の新しい階段を駆け上がってきたのである」という箇所である。決して汚さず「宝物」として持っておこうとした本書に、思わず傍線を引いてしまった。
巻末の60ページにわたる人名・図版注も、詳細でとても参考になります。読むべきですよ!