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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

完全ガイド 皆既日食

表紙写真

  • 武部俊一 著
  • 朝日新聞出版
  • 四六判、175ページ
  • ISBN 978-4-02-250583-5
  • 価格 1,050円

すごい内容の本が出た。著者の武部氏は、当時五島プラネタリウムの解説員だった評者が朝日新聞夕刊コラム「星空ノート」の取材に協力させて頂いたころ、同新聞の科学部長だった。取材を業務とする科学ジャーナリストであると同時に「日食病」にもかかっている彼が、いかにも書くべくして書いた本である。

同じ食でも、評者が取りつかれているのはアルゴル食。金にならない評者の病気と、日食病という世人受けする著者の病気の差異に愕然としてしまう。金はかからず寒さに震えるだけの観測と、お金をかけてホットな感動が得られる観測の違いは歴然と言うところか。

本書は完全ガイドとは言うが、日食の一般論(原理や観測法など)の記事を期待してはいけない。あくまで報道記者が書いた日食記録集である。最初は著者が参加された20世紀後半以降の皆既日食・金環日食の取材記事で始まり、評者も良く存じ上げている日食病患者の方々が、プロ・アマ問わず多数登場される。その筆鋒はさすが鋭い。評者が存じ上げなかった様々なエピソードが紹介されている。

だが本書の本領は第4章「報道の中の日食」第5章「科学の中の日食」第6章「切手の中の日食」第7章「日本史の中の日食」第8章「世界史の中の日食」第9章「文学の中の日食」第10章「映画の中の日食」第11章「皆既日食が無くなる日」のおよそ100ページである。各章のタイトルを見ただけで、本書が完全ガイドと銘打たれている理由がわかろうというものだ。どの章をとっても、まさしくオモシロイの一言。おかげで評者の「こだわり天文学」や「今日は何の日コレクション」のレパートリーが大幅に増えてしまった。

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