- 朝日新書 刊
- 11×17.2cm、207ページ
- 2014年12月
- ISBN 978-4-02-273593-5
最近平和憲法の信念を、ある一部の右翼政治家達は忘れてしまったのではないかと思うが、同じく旧暦になじむ暮らしもその一つだ。七夕だと言って竹に短冊を吊すのがそれだと言うのは誤りで、本当は新月から六日目の上弦前の月が懸かり始め、織女が月の舟に乗って天の川を横断するという感覚が、我が国では正解なのだ。上弦や下弦近くの欠けた月あるいは新月近くではお月見にならないことから、お月見そのものが廃れていき、ついにはカルチャーセンターで、無粋な筆者がそれを語らなければならないほど落ちぶれた昨今の十五夜だが、本書には、旧暦こそ日本の文化だと語られている。
今や暦は現代天文学の対象にならないそうだと言われ、単にコンピュータ計算で済むと内心では思っている天文学者も現実にいる。しかし、それは大間違いだ。筆者が大昔プラネタリウムで毎回話し始める枕詞に、今日は何の日?で度々暦日をご紹介したほど、旧暦は日本人に定着した感覚だった。日本を本当に理解するには旧暦こそが一番なのだ。
本書は、国立天文台で呼び始めた伝統的七夕の主唱者の一人である著者が、世に問うたもの。故に背景にある天文現象の紹介が、類書には見られないほど丁寧である。勉強になりますよ。赤穂浪士討ち入りも大河ドラマ主人公吉田松陰の脱藩も共に十二月十四日、すなわち満月だったこと、その理由は簡単明瞭だ。ともかく、本書は天文学的に面白い!