- KADOKAWA
- 480ページ
- 978-4044005061
- 定価 1606円
これまでも数冊著者の本を読んできたが、毎回、完全に理系である評者と異なる完全な文系学者である著者の宇宙観・天文観を楽しませてもらっている。本書も同様で、どのように異なるかは、本書を味わってから読者皆さんの頭で判断していただきたい。本当に全く違いますよ。もちろんどちらが正解という話ではない。著者が子供時代愛好されていた聖歌「慈しみ深き:文部省唱歌『星の界』」は評者も大好きで、変光星の観測が終了したときには、必ず今でも「月なきみ空に きらめく光…」と歌いながら、マンションの中に入っていくのが習慣である。夜中、居住者には迷惑かもしれない。
一言お伝えしておくと、本書には著者の天体観測が一つも紹介されていない。著者が科学実験で書かれているのは、中学二年時に、校舎屋上から石を落とすという有名なガリレオの落体実験を、月刊雑誌「子供の科学」に啓発されて妹を助手に行い、落下時間差を聞き取れずに失敗したことのみである。ピサの斜塔での落体実験は、実際に行われたかどうかがいまだに不明で、もし実施されたのなら1591年と言われ、来年が430周年なのだが。また、史上初めて同実験を伝えたのが1648年にガリレオの死亡時僅か20歳だった助手ヴィヴィアーニだった。すなわち、本人はガリレオの落体実験を目撃していないのだ。
本書は、時間論や暗黒物質、量子論と限りなく発展していきますよ。お楽しみに!