- KADOKAWA/角川学芸出版 刊
- 11×14.8cm、285ページ
- 2015年3月
- ISBN 978-4-04-4052225
有名大書店店頭で平棚置き山積みされた本書を見つけ、あとがきを読んだところ、大修館書店から1997年に出版された「宇宙は卵から生まれた」を改訂、新項目を付加、内容をより充実させたものだという。帰宅後に初版を床山積み内から掘り出すと同時に、1995年刊NHKブックスの同先生著作の「宇宙はどこまでわかっているか:新装版」も掘り出してしまった。
ともかく本書も同様に先生の著作は楽しく面白い。ただし天体物理の学生にとって。本書の本道は物理の話題であり、ビッグバン宇宙論の問題点が(1)一様性(地平線)問題(2)平坦性問題(3)温度の問題に集約される、といったことが取り上げられている。
一方で、(1)コウモリが超音波のドップラー効果を感知(エコロケーション)(2)警察によるネズミ取りもドップラー効果を利用(レーザーの当たる位置によって誤差発生)(3)日本最古の紋様は土器に彫られた渦紋様(4)漢字「神」のつくりは左巻きのEと右巻きの∃などの組み合わせで申となり渦の対を意味し、(5)潮汐の潮はあさしおを、汐がゆうしおを意味し、一日二回潮を指している(6)スキーのジャンプはいかに揚力を利用するかに懸かるといった話題は、評者が創始した「こだわり天文学」(命名者は星ナビ編集長)最適の教科書ともなっている。おかげざまで、これも評者が編集中の「雑学天文大百科」も満杯になってしまった。つまり、一般人にとっても興味深い話題で溢れかえっている。
同書の弱点は皆既月食や流星などが取り上げられていない点。こここそ評者が生きる道。