- 角川学芸出版
- 四六判、222ページ
- ISBN 978-4-04-703418-1
- 価格 1,575円
出版情報で本書を知り、科学書・天文書を多数販売するあの書店ならと、電車に乗って行った先。大急ぎでエレベータに飛び乗り、目指すコーナーに着いたが、それらしき本は見あたらず、途方に暮れて、たまたま近くにあった検索機に入力したところ、××××棚に在庫と出た。××××棚がわからず、近くにいた店員さんに尋ねたところ、階下の文芸書コーナーに案内され、発見した。
前国立天文台長執筆ということで、歳時記でも天文書コーナーだろうと決めつけたのが運の尽きだった。これで本書がすべて物語れる。まさしく立派な文芸書なのだ。中公新書の「宇宙をうたう」でも古典についての深い造詣をご披露いただいたが、本書は著者曰く、日本人・東洋人の心のバリアが溶解していく課程が見事に描き出されているのだ。さすが東大教養学部を卒業なさった方。俳句・和歌・文学や宗教への深い造詣は、随所に満ち溢れる。中国の星座「酒旗」にちなむ野尻抱影先生の酒好き俳人を戒める話は、著者の知己の幅広さゆえで、先生が酒を嗜まなかったことを紹介している。そういえば、五島プラネタリウムでの学芸委員会後の会食で、先生はジュースしかお飲みにならなかった。
ひとつ気になるのは、著者が天文学者ゆえ宗教は信じないとおっしゃられるが、日本はともかく、諸外国には宗教を信じる立派な天文学者は多いと聞く。ともかく文学愛好の天文学愛好家には、おすすめすべき大人の本である。