- 講談社
- 新書判、137ページ
- ISBN 978-4-06-214282-3
- 価格 798円
著者は日本と中国の考古学を研究する気鋭の大学教授。3年に及ぶ留学で中国天文学に造詣を深められたことは随所で読み汲むことができる。キトラ(亀虎とも書く)古墳の天井壁画が始皇帝に始まる陵墓の歴史と深く結びつき、中国天文学に関連するという著者の見解は、非常に興味をそそられる。故意に大きく描かれた4個の星と28宿はキトラ古墳被葬者が誰かを暗示している、狭い石室で無限の宇宙空間を演出したデザイナーの創作力のすばらしさ、日月の図柄に見られる連山や海面から、不老不死の薬を分配する西王母を被埋葬者が黄泉の国に訪ねるという寓意を読み取れる、墓室に描かれた十二支の役割は死者を仙境に導く従者、などなど、200ページ有余の小冊子ではあるが立派な天文思想史書。「この方は位置天文学にも精通していて実力は相当高い」とお見受けできる。歴史家だけでなくおそらくどなたにも面白い本ですよ。