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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

物理学天才列伝 上巻 ガリレオ、ニュートンからアインシュタインまで/下巻 プランク、ボーアからキュリー、ホーキングまで

表紙写真

  • ウィリアム・H・クロッパー 著/水谷淳 訳
  • 講談社 刊
  • 17.4 x 11.4cm、上巻456ページ/下巻480ページ
  • 2009年12月
  • ISBN978-4062576635/ISBN978-4062576642
  • 価格 各1,365円

天才に一つ共通することが、本書を読んで評者にわかった。それは、その研究が好きで没頭できることだ。天才だから研究の遙か先まで見え、ゆえに没頭できることなのだろう。だからめざましい成果を得ることが出来るのだ。ニュートンなど女性に目を向けることもなく(多少違った意味があったらしく、また評者は本書で初めて知ったことだが、1回だけ求婚した人がいた)何年も1つの研究に没頭したり、また、アインシュタインは余命幾ばくもない中で書斎で椅子に座って研究を続けていたことも本書に書かれている。

はるか先(空の話ではありません)が全く見えない評者は、しようがないから双眼鏡を持ったまま、寒風吹きすさぶ暗い駐車場で椅子に座って臨終を迎えようと思っている。あぁ近所迷惑!

著者はアメリカの大学名誉教授で、科学史の相当な大家であることが読めばわかる。訳者が科学書翻訳の相当な大家であることも読めばわかる。アチコチに日本では知られていないエピソードが溢れ、訳文は見事にこなれ、だがたぶん日本の大学で物理専攻のフレッシュマンは勿論、三・四年生でもうっかりするかも知れない、院生なら読める程度のハイレベルである。だからブルーバックスなのだ。

各巻とも450ページを超え、一気読みはまず困難!せめて天文だけでも、とズルを決め込んでも、上下巻に分散しているので、結局2冊買わねばダメだ。しかし、2冊買ったら物理学の全貌が明らかになる。すなわち、上巻には力学・熱力学・電磁気学・統計力学・相対論が、下巻には量子力学・原子核物理学・素粒子物理学・天文学・天体物理学・宇宙論が記述されている。

「一般読者は数式に恐れをなす」という言葉に耳を貸さず、一部の章(天文に関わる章には全て)では数式を示した、とのたまう著者に評者は絶大なる賛意(評者が理解できるかどうかは別にして)を捧げたい。高校(たぶんアメリカの)程度の初歩的な代数学の知識があれば理解できるそうだ(やや賛意は控えたい)。でも、この本を書棚に置いておけば、いつか絶対に後悔することがないはずだ。