- 講談社ブルーバックス 刊
- 11.2 x 17.4cm、246ページ
- 2014年8月
- ISBN 978-4-06-25873-3
書店で本書を目にしたとき、ついに来るべき時が来たと思った。著者が鉱物学者だったからだ。
筆者が地学科にいた学生時代、天文学→気象学→地球物理学→地質学→自然地理学→鉱物学という風に、天文学と鉱物学はかけ離れたものだった。天文学専攻にいなかった女性も鉱物学には多数いた。大体、天文学者が月のクレーターを火山だと論じたり、地質学者が同じく隕石落下でできたと論じると、どちらも死期が近いと言われたもの。なぜかと言えば、フィールドワーク未経験者と肉体的にそれが無理になった人が共に他分野に足を突っ込むのは無理だからだ。ましてや鉱物学者は論外だった。研究したくても標本を手にすることができないからだ。
それが今や大きく様変わり。日本をはじめ各国の探査機が月に行き、これからも続々と行く時代になった。その理由が、本書が鉱物学者によって書かれた理由であり、各国が月をめざす理由でもある。アポロ以前の時代に育った筆者には、本書の本文はもちろん、すごい掲載写真を見るだけでも、今や月の研究は鉱物学者の手に渡ってしまったことがよく理解できる。
水がないのに蛇行谷ができたわけや、溶岩ドームが火山地形であると判断された理由、まだ解けていない3個の不思議な縦孔、低カルシウム輝石やウランの不思議な月面分布などなど、単なる新書ではないブルーバックスの魅力がたっぷりである。そして本書最大の魅力は、5ページにわたる著者の4個の大胆予測だ。その内容は、読んでのお楽しみ。