- 講談社学術文庫2291 刊
- 10.5×14.8cm、524ページ
- 2015年4月
- ISBN 978-4-06-292291-3
- 価格 1,598円
もしかすると本書既読の諸氏は多いかも知れない。その理由は、1993年に徳間書店から出版され、2009年に岩波現代文庫として再出版され、更に今回講談社学術文庫化されたものだからだ。このため、あちこちに加筆された跡を見ることができる。換言すれば、その都度データの信頼度が高まっている。その結果、筆者の雑学天文大百科の該当部分のデータも、大幅訂正が余儀なくされた。
まぁそれはともかく、実に内容豊かな本で、特にみなさんにお勧めは(本文はもちろんのこと)、末尾50頁超の人名・図版注である。もちろん主題は宇宙・天文だが、物理・化学・生物・地質から哲学・陰陽五行説まで、そこらの百科事典顔負けの内容である。
引用文献・参考文献の表を含め、450頁に達する本文の方は、科学史と言って良く、それも古代から現代までまんべんなく網羅されたもの。何かとガリレオ・ケプラーニュートンに片寄りがちなフツーの科学史の本と比較して、これは書棚に一冊の本ですよ。
更に並みの科学史書と違うのは、著者が現役の地球物理学者として研究されていた地球科学から見た生命の起源と進化、特にいわゆるK−T境界層での恐竜絶滅を通して、新たな文明形成に於ける宇宙の意味や今後の人類の可能性について、改めて考えさせてくれる本となったことである。さーっとではなく、一字一句噛み締めながらお読みいただきたい。