Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

宇宙論と神

  • 池内了 著
  • 集英社 刊
  • 16.8 x 10.6cm、224ページ
  • 2014年2月
  • ISBN 978-4087207248

「天文学の歩みは、宇宙を追い求めながら、神に肉薄してきた歴史でもある−」と記された帯を見て即座に購入を決めたのは正解だった。「こだわり天文書評」を続けるうちに、筆者は一目で本相(人相みたいなもの)を見分ける能力がついたらしい。もちろん裏表紙に記された内容紹介も書棚の前で読んだが…。

科学は宗教と無関係と思っている人が多いらしいが、それは無宗教に近い日本人特有のこと。バチカン天文台はもちろんのこと、天文学史を彩る多数の学者達は神に肉薄しようとして科学の歴史を創ったと、本書を読んで筆者は考えている。何を隠そう筆者も学生時代に洗礼を受け、ヨゼフという洗礼名を持つキリシタン(ただし現在は家族共々“隠れ”)である。だから、変光星観測のときも常に宇宙の“裏”を意識している。

第1章から6章までは総論と古代人の宇宙観、第7、8章は近世における“神”の後退、第9章から14章までは模索する科学者と神との関係について詳述されている。

人類創成以来、神の科学的捜索は連綿と続いていることがよくわかる。池内先生に言わせてみれば、ビッグバンもインフレーションもダークマターやダークエネルギーも、大宇宙を前にした人間が神の相貌の詳細を明らかにしようとひたすら観測を続けた結果、見出されたのだという。宇宙論に関心をお持ちの方は、すべからく本書を熟読すべし。