- 集英社 刊
- 11.0 x 17.3cm、253ページ
- 2014年12月
- ISBN 978-4-08-7270768-2
本書はまず、村山斉さんのニューヨーク国連本部でのスピーチ(90ページ〜)から読みはじめていただきたい。そこに書かれたメッセージ「物理学と数学は宇宙全体に通用する」ということが本書の主題であることがわかるからだ。副題はヒッグス粒子の理解である。そして、それを発見するために使われた国際リニアコライダー(ILC)のことである。
本書は、村山先生など13名の方々の共著である。宇宙飛行士の山崎直子さん以外は現役バリバリの宇宙物理学者達で、担当部分の記事内容の理解は相当な知識が要求されるハイレベルなものだが、共通しているのはヒッグス粒子。もしこれが存在しなかったら、光速で空間を自由に飛び回っていた電子やクォークが凍り付いたヒッグス粒子に邪魔され(質量が与えられるということ)、光速では運動できなくなり、陽子・中性子が形成されて、電子と原子核から原子が構成されることはなかったという共通理解である。つまり現在の宇宙に物質が存在する原因が、ヒッグス粒子にあったということなのである。
筆者のような観測屋にとって決して簡単な内容ではないが、その最先端科学であるヒッグス粒子のことは、現在いくらか判りつつあるダークマター、まったくどころか糸口さえ掴めていないダークエネルギーの研究こそ現代宇宙論の重要課題なので、ぜひみなさん本書をその入門の手がかり足がかりとしてご熟読いただきたい。たったの253ページだから。