- 集英社
- 320ページ
- 定価 1034円
評者は最近、熨斗星(うしかい座)、太鼓星(かんむり座)、錨星(カシオペヤ座)、旗星(ペガスス座)など、民族性に溢れる日本独特の星座や、半人半馬(ケンタウルス座、いて座)、ジャムシ(さそり座)など、江戸時代に使われた日本式西洋星座の歴史や変化を調べている。その折り、司馬江漢、志筑忠雄、山片蟠桃を詳しく紹介している本書に巡り会った。というより、まだ出版されたばかり。新書版とはいえ、非常に詳細に説明されている。
星座史ではないが、たとえば本木良永著の『天地二球用法』や『阿蘭陀全世界地図書訳』などに時代背景がよく理解できる。特に蘭学者志筑忠雄の役割についての解説は、第一級のもの。著書『暦象新書』についてこれ以上の解説書はないと言うことができる。当時考えられていた「無限宇宙論」はたいへん勉強になった。「鎖国」という言葉を発案したのが志筑だったということも、本書で初めて知った。
山片蟠桃の著書『夢の代』は、庄屋の番頭だった当人が地動説に基づく世界観を述べていて、日本人として唯々驚くばかり。宇宙に人間が存在する理由まで、述べているのですよ。改めて評者は、日本人として高く評価したい。コペルニクスやケプラー、ニュートン以上ですよ。ともかく、本書は勉強になります。お勧めします。