- 新潮社
- 四六判、221ページ
- ISBN4-10-303371-1
- 価格 1,260円
本書は、おそらく現時点でも日本人でただ一人の経験者のレポート。なにしろ「火星」を歩いたのだから。もちろん、本物の火星には、これまで誰1人として滞在どころか着陸したことすら無い。この科学ジャーナリストが行ったのは、米国ユタ州の砂漠と、北極圏グリーンランドに近いカナダのデボン島という無人島と、ゼロGツアーである。
ただそこは、まるで地上の火星といってよいところで、アメリカの火星協会が運営する円筒型模擬実験施設(ハブ)がある。そこに約2週間滞在し、火星面用宇宙服を着用し、EVA(船外活動)の訓練、火星に見立てた地質調査など、本物ソックリの訓練を通し、将来の有人火星探査の可能性を調査しているのだ。なるほど、そうか、えっ、ふーんの連続でもある。
さすがベテラン記者の筆力、楽しく面白く気軽に読める文章は、評者もぜひそこに行ってみたくなるほどである。どなたにもおすすめしたい本だ。