- 新潮社 刊
- 11.3×18.2cm、256ページ
- ISBN 978-4106106439
- 価格 842円
あと1年で70歳の評者は、最近若い方々に教えられることが度々だ。今年41歳の素粒子物理学者の著者を、若いというのは失礼千万だが、文系学生に物理の基本を教示される経験談に、プラネタリウム解説員は大いに耳を傾けるべきだ。
筆者も本書第二話「それでも地球は動いているか?」を読みながら考え、発見(本書には書いていないから発見とする)したことがある。流星が飛ぶように見えるのは、地動説の証拠ではないか。彗星から放出された塵に若干のスピードがあるのは確かだが、それが秒速数十kmとなるのは、地球が秒速30km前後で太陽の廻りを公転しているからですよね。光行差や年周視差、あるいはフーコー振り子を持ち出すまでもなく、まさしく立場の違いであって、流星が飛んでいるのではなく地球が飛んでいるのだ、という事が素人でも実感できるのだ。彗星からのダストトレイルと地球が毎年ほぼ同じ日に出会うからこそ、流星群が見えるのですよ。だからこそ、放射点方向も決まっているのだ。
石やリンゴが地に落ちるのが、それらが地の性質を持つからだとアリストテレスらが考えていたのに対して、ニュートンが月に眼を向けたことが万有引力の発見に繋がったと第五話で説明されていることから、実は目から鱗の話が物理学には溢れているのだということを、ぜひ本書を通してみなさんにご理解いただきたい。楽しいですよ。