- 中央公論新社
- 新書判、340ページ
- ISBN4-12-101826-5
- 価格 924円
大阪府立大学をはじめ、多数の大学などで科学史を研究された著者が、自らの脚で日本全国を巡り、日本科学技術の揺籃期とされる江戸時代36人の風雲児が活躍した跡を訪ね、詳細に描いた人物手引書。天文関係者はその内1/4の、千々石ミゲル、西川如見、シドッチ、三浦梅園、司馬江漢、山片蟠桃、間重富、帆足万里、国友一貫斉の9人。麻田剛立、渋川春海、高橋至時、伊能忠敬らは、項目としては取り上げられていないが、本文中に登場する。実地踏査した成果がすばらしく、評者がもっとも関心を持つ「鎖国下最後の潜入神父」シドッチ上陸地点屋久島南端は、地元タクシーも尻込みする急峻場所まで踏み込んだという。死ぬまでの5年間幽閉されたキリシタン屋敷跡(東京文京区)には、評者もつられて足を運んでしまった。日本各地に分布するこれらの人々の跡地を訪ね、日本科学史の成立経過を、風景や面影を見ながらたどってみるのは、必ずや生きた勉強になるはずだ。