- 中央公論新社
- 新書判、271ページ
- ISBN4-12-101843-5
- 価格 819円
東大物理学科卒で博学の脳科学者が書いた本書は、確実に天文書の範囲には入らない。しかし、天文学が科学の範囲に確実に含まれる以上、天文に関心を持つ人、特に研究者や解説者を目指す人々に、ぜひ熟読いただきたい本だ。なぜなら、科学研究者のあるべき姿が広範かつ詳細に論じられているからだ。さらに一般の読者に向けては、研究者が置かれるシビアな世界をかいまでものぞくために、比肩すべき類書がないものだ。大変考えさせられる内容で、評者も完読するのに6日ほどかかり、読了後しばしKO状態になってしまった。
筆者いわく、科学研究に王道はなく、運鈍根勘+個を磨くのがキーワードで、立派な研究者ほど頑固一徹、自己本位、孤独に苦しむとなれば、研究者にならなかったのが不思議なほど、評者は見事に適合する? ただ才能がなかっただけだ! 冗談はともかく、数ある科学論書中、研究者(科学者に限らない)のあるべき姿を余すところなく面白く、またある人々に対しては、ショックで寝込むかもしれないほど辛らつに解き明かした出色の本として、強く広く推薦したい。
各章冒頭に著名科学者が残した名言を掲げ、各章ごとにそこから本題に入る形式も親しみやすく、さらに随所に多数のうんちくをちりばめて内容に厚みと深みを加えている。巻末に冒頭54名言の英独仏西語などでの原文がかかげられ、ニュアンスが正しく伝わるための配慮も本書の大きな特徴になっている。