- 中央公論新社
- 17.4×11.2cm、316ページ
- ISBN 978-4121025234
- 価格 1015円
本書は天文学書ではない。しかしながら、神話を通して、お客様に人間という得体が知れぬものを語るプラネタリウム解説者は、絶対に読まねばならない本である。これまで多数の星座神話に関する本が刊行されてきたが、本書は近代星座の起源となったオリエント、すなわちバビロニアやエジプトの神話について、詳細かつ理解しやすく、単なる翻訳書ではなく、著者がバリバリの日本人研究者であるがため、日本人とは異なる世界観を判りやすく説明してくれている点が一番の特徴となっている。たとえば、180ページに説明されているように、日本にはキリストのように復活する神は存在しない。
黄泉の国は三途の川の向こう側にあり、明確に区別されているのだ。ところが、中近東や欧州では三途の川の概念は存在しない。よって、神の国と地上とは、日月界と星界で区別されるだけである。ところが近年、地動説が確定され、またビッグバン、宇宙の加速膨張もほぼ確定し、マルチバースまでささやかれるようになって、はてさて一体神様はどこにいらっしゃるのか判らなくなったことを、自信を持って多数のお客様に語れるかどうかは、貴方の考え方次第なのだ。クリスマスの起源は、12月25日(クリスマス)に岩の穴中で誕生したゾロアスター教の太陽神ミトラ(81ページ)や、東南アジアや中国に伝わるブランコ祭(141ページ)など、本書からの研究材料は果てしなくありますよ。