- 中公文庫
- A6判、336ページ
- ISBN4-12-204559-2
- 価格 980円
2年前初版なので書評はどうかと思ったが、文系の方としては珍しく野尻抱影の愛機ロングトムに似た望遠鏡を駆使し、その結果、月と土星の有様が著者に大きく影響を与え、東亜天文学会機関誌「天界」を愛読する高校生天文部員だったりで、特に「月」にこだわり、近々月に関するデータベースを創ると意気込んでいらっしゃる方の著作なので、誠にこだわりにふさわしく思い、ご紹介したい。著者は評者より2歳上。やはりこの年代の大特徴「こだわり」の典型。しかも文系の方として、哲学や文化や言語にうらやましいほど詳しい。プラネタリウム解説員として、評者も引き出しの数は多いほうだと思っているが、著者のそれはびっくりするほど多種で深い。理系の評者がイチャモンを申し上げれば、数値精度や科学用語定義に多少無理があるが、それは文系知識の物量で吹き飛んでしまう。これまで文系人が理系的に書いた暦中心の月の本とは大違い。どなたにもおすすめする。