- 中央公論新社
- 15.3×10.6cm、343ページ
- ISBN 978-4122066892
- 価格 1080円
本書は1989年に出版された『野尻抱影−聞書“星の文人”伝』を底本として改題文庫化した本である。従って、30年前にお読みになった方も多いだろう。評者もその口で、今や本の山のどこかにまみれて行方知らず。従って、改めて読んで新発見続出といった次第。ただし、前書と大きく異なるのが渡部潤一先生の解説が新たに付いたこと。どうやら、渡部先生と野尻先生は直接の面識はなかったようだが、その間に石田先生が介在し、名著『天文台日記』(評者の書棚にも堂々とある)を通して、影響があったようだ。それどころか、渡部先生を天文学者にしたのは、その本と野尻先生の『星三百六十五夜』だったという。
評者も野尻先生や本書にも度々登場する村山定男先生には、五島プラネタリウム時代大変お世話になった。村山先生には就職面接で受験者50人中2人の中に入れていただけた。野尻抱影先生には、桜新町のご自宅まで押しかけ(というより、独特書体の原稿の説明をお伺いした)、書斎の窓から風景を楽しませていただいたという貴重な体験がある。また、月に一回五島の学芸委員会で、会議後のフランス料理会食会で、一人和服姿でお見えになった先生のお姿がとても懐かしい。第一級のジェントルマンだった。また、著者の石田先生には五島で一回お会いしただけだったが、歌舞伎通の先生から直接そのお話を聞けたのは、貴重な思い出になった。本書カバー写真「野尻抱影と愛機ロングトム」も貴重ですよ!