- 東京大学出版会
- 四六変型判、234ページ
- ISBN 978-4-13-063602-5
- 価格 2,625円
東京大学名誉教授の著者は、客員教授などとして欧米に行かれた経験豊富な物理学者だ。その方にご案内いただく、いわば物理学者の足跡をたどる観光旅行書だ。目次に「地図と時刻表を手に」とあるのが一番この本を表現しており、有名サイエンティストの生家からお墓まで、そしてその途中の研究所など、ありとあらゆるところを主人公のエピソードを含めて紹介してもらえる。なんとか鉄道のどこそこの駅で下車して、そこから歩いて××m行ったところの古本屋の前を通り過ぎ、角の郵便局を右に折れ、しばらく行くと…といった調子なのだ。本当に行っても多分道に迷わないことだろう。
しかも、ほとんど全ページに建物の写真が掲載されており、大事な図版は見開きで楽しむことができる。電気物理学者アンペール、真空の実験で有名なゲーリケ、天才で奇人のキャベンディッシュ、量子力学のシュレーディンガー、放射能のキュリーなど多数の物理学者の中で、天文学者はガッサンディとフラウンホーファーのわずか2人。だが、この2人の紹介書として見ると、邦書中ではもっとも優れていると評者は考える。
ガッサンディと関連して紹介されているシラノ(ド・ベルジェラック)が物理学者だったとは知らなかった。時間と空間を物質から切り離した第1号がガッサンディで、ニュートンはガッサンディから一番影響を受けたのも知らなかった。フラウンホーファーの生き埋め救出や、彼の業績にからむ学者のねたみなど、重要なエピソードの紹介もおもしろい。ともかく、科学者が人間であることを(あたりまえだ)ほんとに楽しくこの本は教えてくれますよ!
主な紹介人物は、記事順に、ボウディッチ、アンペール、グリーン、カルノー、ノイマン、シラノとガッサンディ、ゲーリケ、キャベンディッシュ、シュレーディンガー、フラウンホーファー、ラムフォード、フレネール、ド・ブロイ、デーブリーン、デュ・シャトレー、キュリー。