- 日本放送出版協会
- 菊判、358ページ
- ISBN 978-4-14-080469-8
- 価格 2,100円
東京神田の大書店の児童図書コーナーで「えっ、アイザック・ニュートンの著書がここに?」と手に取ったら、残念! 著者は「アイリック・ニュート」だった。だが、つられて立ち読みしたら、「これはぜひ本書評でご紹介しよう」と心を決めた。オスロ大学で天体物理学を修めたサイエンス・ライターの著者なので、329ページの半分以上は天文学史だが、そのレベルは決して児童書ではない。子どもに語りかける口調なので、好学の理科少年も読むことができるが、大人の教養書としては放送大学の教科書級と申し上げて良い。小中高の先生方をはじめ、大学の先生だって授業の参考書には役立つはずで、教養を深めたいと願う一般成人にももちろんお勧めである。
評者はこれまで数十年、ダンネマン、サートン、広重徹、伊東俊太郎など、有名な科学史家の著書を多数読ませてもらったが、本書はそれに匹敵する素晴らしい本である。古代ギリシアのターレスから始まり、アリストテレス、プトレマイオス、オッカム、ダヴィンチ等を経て、コペルニクス、ガリレオ、ケプラー、ニュートン、ダーウィン、パスツール、キャベンディッシュ、ハーシェル、アインシュタイン、ハッブル、リービット、ペンジアス、ウィルソン等々、多分野における有名・無名の碩学がズラズラあがる。今度暇なときに数え上げてみたいものだ(多くて無理かも知れない)。なお、初登場が最後(本文345ページ)となる科学者は、1993年に1億2000万年以上前の昆虫化石からのDNA抽出に成功した米国の生物学者キャノである。
著者は謙虚で、科学万歳! ではないところに説得力がある。それはたぶんノルウェー人の国民性であり、ドイツ人・イギリス人・アメリカ人、そして日本人の科学史家とは違った視点を感じることができる。各ページの3分の1を占める欄外年表を見るだけでも、本書を購入する価値がある。つまり、相当詳しいのだ。本書は新刊ではなく、10年前に初刷が出されているが、今年すでに第10刷だそうだ。初刷で終わってしまう本とは確実に異なるのである。何度も申し上げるが、科学史をまともに研鑽したい方は、ご自宅の書棚にぜひ一冊どうぞ!