- NHK出版
- 256ページ
- 定価 1815円
読者の皆さん達は、必ずや評者と同様、これまでに宮沢賢治の独特な作品群、『銀河鉄道の夜』『月夜のでんしんばしら』『よだかの星』などをお読みになったことがあるだろう。そして、単なる童話だろうと思って読み始めると、その内容の深さに驚いて、人生を感じてしまった人も多かったに違いない。明治末期から昭和の初めにかけて、文壇で活躍した宮沢の、当初は児童文学として見られていた作品群は、本当に面白かったはずだ。
本書は、賢治と同郷の東北地方にお生まれになった著者、というより渡部先生、評者より14歳も若い立派な天文学者だが、氏が文学を通して正面から賢治の作品を語った本というのが正解である。
実は、145-147ページに説明がある三省堂版星座早見については、評者とちょっと関係がある。星座早見を評者が人生で初めて手にしたのは、評者の父が勤めていたその三省堂書店だったのだ。だからって何なのよ?でしかないが…。しかも、今ではパソコンにもそれが再現される時代。銀河鉄道の時代とは大きく変わったのだ。ともかく、銀河鉄道の物語が書かれた20世紀初頭の天文学から、現代の天文学が大きく進化したことを感じさせてくれる良い本である。ぜひご購読をお勧めしたい。