- NHK出版
- 新書判、213ページ
- ISBN 978-4-14-088247-4
- 価格 735円
暦研究60年、棋界の権威と呼ばれる岡田先生の近著。評者も、五島プラネタリウム時代たった一度だが筆者にお目にかかったことがある。そのご高名とご成果は同館の学芸委員会で何度も話題になった。新書だが内容は濃く、とくに渾身の力をこめて書かれた事が伝わる明治改暦の動機と経過が、評者は本書で初めて詳細に理解することができた。
明治五年十二月がわずか3日で終わったことはよく言われるが、翌六年閏六月を省略したことの方が、財政窮乏にあえいでいた維新政府にとって効果が大きかったことがよくわかる。さらに現行の国民の祝日でさえ、その多くが幕藩体制を脱却させ天皇制を確立するための政策理念に基づくということが、本書でよく理解できた。
建国記念日の2月11日が紀元節であることはもとより、11月3日の文化の日が天長節(てんちょうせつ:この場合明治天皇の誕生日)、11月23日の勤労感謝の日が新嘗祭(にいなめさい:天皇が新穀を神前に供え初めて食する日)に起源することをみなさんご存じでした? その他、明治改暦に面食らった庶民の様態やカレンダー会社の損害なども具体的に記述されている。本書を読まずして、明治改暦を語ることは不可能だ。