- 早川書房
- 四六判、230ページ
- ISBN4-15-208680-7
- 価格 1,890円
地球自転の証拠として理科の教科書で必ず挙げられるのがフーコーの振り子。国立科学博物館をはじめ、各地の科学館・大学などに設置され、一般の人の目に触れることが多いが、その発案者フーコーの並々ならぬ苦労はほとんど知られていない。その着想から実験構築までの苦労を、段階を追って詳細にルポし、解き明かしたのが本書である。静止座標系に対する地表面の回転など、天才的ひらめきがどのような背景でフーコーの中に芽生えていったかは、物理を学ぶ人々には格好の材料である。
残念ながら、わが日本には、この種の研究に欠くことができない現物・資料が一般人の目に触れる環境がない。おそらく、今教育界で問題になっている科学離れの元凶がそこにあるのではと考えている評者は、史的材料が豊富な欧米各国の研究環境をひじょうにうらやましく思う。この本を広く読まれることを願う。