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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

物語 古代エジプト人

表紙写真

  • 松本 弥 著
  • 文藝春秋
  • 17.2 x 10.8cm、262ページ
  • 2000年3月
  • ISBN 978-4166600939
  • 価格 746円

書店で平積みになっていた本書を手にしたと同時に「書評を書こう」と決めた。冒頭から新知識で勉強!勉強!の書。

エジプトが栄えた理由は、南から北へのナイルの流れと、北から南への地中海からの卓越風によること。ナイルの洪水でできた耕地(ケメト)が後世のアラビアで、エジプトとそこで行われる秘儀(ミイラ作りや神秘的宗教儀式)を意味する言葉(ケミ)に変化し、さらにアルケミー(錬金術)・ケミストリー(化学)の語源になったこと。エジプトが、東は僅かばかりの危険な陸橋、北は広大な地中海、西は不毛の砂漠、南はエチオピア高地という自然の要塞で囲まれて外敵に攻め込まれることが少なかったこと。すべて本書で教えてもらったのである。大変に密度が濃い本だ。

本書は書名に「物語」とあるが、これは出版社の都合でつけられたもの。純然たるエジプト史学の本である。天文学書のご紹介を旨とするこの書評で取り上げさせていただくわけは、もちろんみなさんご推察の通り星座史学の故だ。シュメール・バビロニア伝統の星座だけでなく、デンデーラ神殿の壁画などで知られるエジプト起源の星座(ただし本書にはそれらについて一言も触れられていない)について考察するのに、その背景を極めて深く論じてくれる本書には、実に感謝!感謝!である。

というわけで、本書の読解を広く星座史に関心をお持ちの方々にぜひお勧めしたい。もちろん、本書本来の目的のエジプト史学や宗教学・美術史などに興味を持つきっかけにしていただくのも良いだろう。それには、ところどころに表示されたヒエログリフの文字表が大変有用である。

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